緊急事態宣言の解除も束の間、春の到来に呼応するように花粉症にも悩まされる季節になりました。日本では古くから定着している「うがい」ですが、多くの人の「うがい」は間違いだらけだとしたらどうでしょうか――。
その「うがい」では、バイ菌やウイルスを洗すことはできません。今回は正しい「うがい」を理解できる一冊を紹介します。
「7秒うがい ~歯科医が考案した新習慣! 免疫力を高めてウイルスを遠ざける」(照山裕子著)きずな出版
「正しいうがい」は学校では教えてくれない
「うがいなんて、言われなくても毎日やってるよ」
「いまさらうがいなんて、教えてもらう必要はないよ」
こんなふうに考えている人はいませんか? じつは、多くの日本人がやっている「ガラガラペーッ」のうがいは、ほとんど効果がありません。
うがいを軽く考えていると、知らないうちに口のなかがバイ菌やウイルスだらけになり、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症にかかるリスク、重症化するリスクが高くなってしまいます。
著者の照山裕子さんは、
「みんな、正しいうがいのやり方を知らないのかも知れない。これが長年歯科医師として働き、多くの患者さんの口のなかと、うがいのやり方を見てきた私の感想です。みなさんも歯科医に行ったら、治療の合間に『口をゆすいでください』と指示されると思います。そんなとき、多くの患者さんは口の中に水を含んで軽くゆすぐだけで、すぐに吐き出してしまいます。なかにはまったく音が聞こえないほど静かなこともあります」
と言います。
しかし......。
「残念ながら、そのようなうがいでは、治療した歯の削りかすや薬剤などが口のなかにベッタリと残ってしまっているのです。もちろん、『治療の最中だから手早く済ませよう』という患者さんの配慮もあるでしょう。あるいは麻酔が効いていれば、うまくゆすげなくて当然です。でも、もし普段のうがいも2~3回でブクブクさせて済ましているなら『うがい不足』です」
照山さんは、うがいが不十分だと口の中に歯磨き粉が残ったままとなり、バイ菌やウイルスを流しきれていないと言うのです。
「新型コロナウイルスの流行によって、これまで以上に多くの人が『外から帰ったら、うがい、手洗い』を習慣にしていると思います。でも、そもそも間違ったうがいをしていては、その効果もほとんどなくなってしまいます。しかし不十分なのは仕方がないことだと思います。わたしたちは誰も『正しいうがいのやり方』を教わったことがないのです」
正しいうがいでばい菌とウイルスを洗い流す
照山さんは、
「歯磨きについては小さい頃からやり方を教わります。手の荒い方も『爪の間までしっかり洗いましょう』などと教えてもらいます。でも、うがいのやり方については誰も教えてくれないのです」
と指摘します。
正しいうがいを教えてくれないのは、「正しいうがいのやり方」が確立されていないからだと、照山さんは言います。さらに、うがいは日本古来の風習とされ、これまで誰もうがいについてしっかり研究をしていないことも理由として挙げられるそうです。
照山さんによると、新型コロナウイルスに感染して重症化した人の口の中のバイ菌の数を調べたところ、重症化しなかった人の100万倍くらい、バイ菌が多かったというデータがあったそうです。
また、新型コロナウイルスは喉の粘膜だけではなく、唾液腺や歯ぐき、舌などからも私たちのカラダに侵入してくることがわかっています。予防のためにも、マスク、手洗い、アルコール消毒に加えて、「正しいうがい」を実践しないと、万全とはいえないようです。
また、口の中のばい菌をうがいでしっかり洗い流せていないと、虫歯や歯周病だけではなく、糖尿病やアルツハイマー、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、誤嚥(ごえん)性肺炎など命に関わる重大な病気になるリスクも高まります。本書は歯学博士である著者が考案した「7秒うがい」を紹介や、口の中が汚れることでどのような病気になるかを解説した1冊です。
この機会にバイ菌とウイルスを洗い流す、正しい「うがい」を学んでみませんか。(尾藤克之)