最大スポンサーの米テレビ局が「ナチスと同じ」
こうした聖火リレーのあり方に、批判的な海外メディアがある。巨額のテレビ放映権料をIOCに支払い、多大な影響力を持つ米NBCが3月25日、ホームページに「Amid Covid fears, Tokyo Olympic Games' torch relay kicks off. It should be extinguished」(新型コロナの恐怖の中で、東京五輪の聖火リレーが始まる。聖火の火は消されるべきだ)と、厳しい論調で批判する意見記事を掲載した=下の写真参照。
米NBCの筆者は、米のスポーツ政治学の学者、ジュールズ・ボイコフ氏。元プロのサッカー選手で五輪に参加したこともあり、五輪と政治に関する著作をいくつか出した。ボイコフ氏は、記事の中で、
「東京五輪は、福島の復興を示す『復興五輪』とされているが、この地域の多くの人々は、資財が五輪を行う東京へと流れ、そのため福島の復興が遅くなったことを知っており、東京五輪を非難している」
と、「復興五輪」のいかがわしさを指摘。
「最大の問題は、聖火リレーで始まる五輪が、パンデミックを悪化させるかもしれないという不安だ。すべての日本国民が五輪までにワクチン接種を終えることは難しい。五輪組織委は海外観客を認めないと発表したが、何千人もの選手、コーチ、報道関係者がワクチン接種なしで入国することになり、日本の世論は不安になっている」
と述べた。
さらに、聖火リレーはナチスが1936年のベルリン五輪で発明したオリンピックの伝統儀式だとしてこう批判した。
「(日本は)ナチスによって始められた五輪の祭壇の儀式によって、公衆衛生を犠牲にするリスクを冒している。聖火リレーの火は消されるべきだ」
と訴えたのだった。
米NBCテレビは、森喜朗・前組織委会長の「女性差別」発言の時も、ホームページ上に厳しく糾弾する意見記事を発表した。筆者も同じボイコフ氏だった。その直後に、それまで森発言を容認していたIOCが批判に転じて、結果的に森喜朗氏の退陣につながった経緯がある。今回のNBCテレビの記事はどういう狙いがあり、どんな影響を及ぼすのだろうか。
(福田和郎)