早野研工(岐阜県大垣市)の新入社員が作った焚き火台「Firebase」が国際見本市でグランプリを受賞し、注目を集めている。
自動車の試作や建設機械・車両などの部品製作を手掛ける早野研工。BtoB向けの製品をメインに取り扱っているが、2016年からは一般消費者向けの製品にも力を入れ始めている。
「Firebase」もそのうちの一つ。20年9月に立ち上がったアウトドアブランド「HotCamp」の第2弾として、松井勇樹さん(22)が製作した。
なぜ新入社員が製作?
「Firebase」を制作した松井勇樹さんは、新入社員だ。なぜ、新入社員が製作するに至ったのだろうか――。広報担当者に経緯を聞いてみると、
「例年は研修の一環として、新入社員が中心となって秋の展示会や技能フェアに展示する板金製品を製作し、発表する場があります。今年(2020年)はコロナ禍の影響で、そういう場がなかったのですが、新商品の開発をすることで、アイデアや発想を形にするいい機会になるのではないかと思いました」
とのこと。
新入社員の方が、型にとらわれない斬新なデザインや機能を取り入れた商品になると考えたという。
なかでも、松井さんが選ばれた理由を聞くと、
「3次元CAD(立体的な図をパソコン上で設計するツール)のオペレーションが早く、入社時に商品企画を希望していたので、試行錯誤して製品を作るには適任でした。まだ任せている業務量が多くなかったのも理由の一つです。マシンの使い方を覚えながら、市場ニーズにあったモノづくりを進めて欲しいと思いました」
と、広報担当者は話す。
「Firebase」は昨年12月24日~21年2月15日まで、Makuake(マクアケ)でクラウドファンディングを行っていたが、初日で目標金額の30万を達成。国際見本市でグランプリを受賞したこともあって、最終的な購入総額は600万円を超えた。
現在は早野研工のオンラインショップで販売を行っており、多くの注文や問い合わせが相次いでいる。大手小売店やアウトドア専門店、ネットショップなどからも声がかかっているそうだ。
人気を博している「Firebase」だが、松井さんはどのようしてこれを生み出したのか。会社ウォッチ編集部は3月18日、製作者の松井さんを取材した。
「自分が作った商品を世に出したいと思っていた」
松井さんは三重県松阪市出身。就職とともに早野研工のある大垣市に引っ越してきた。
早野研工に入社した理由を、松井さんに聞くと、
「早野研工が作る金属製の麻雀牌や将棋駒を見て、おもしろそうな会社だと思いました。もともとモノづくりが好きだったのと、インターンシップの際に社長から『BtoC製品を強化したい』という話を聞いて、ここに入るきっかけになりました」
と話す。
広報担当者によれば、早野研工では2008年のリーマンショックを機に「このまま仕事を待っているだけの町工場じゃだめだ」との考えが芽生えた。その技術力をPRするために生まれたのが24金メッキ加工の麻雀牌だ。
金属製の麻雀牌は展示会に出品。来場者からの「購入したい」という声に後押しされ、2016年に自社のオンラインショップで販売を開始した。早野研工のBtoC製品の先駆けとなり、のちに金属製の将棋駒も発売した。
会社に興味を持つきっかけとなったBtoC製品を、手掛けることになった松井さん。新商品の開発を引き受けたときの気持ちを次のように話す。
「自分が作った商品を世に出したいという想いがもともとあり、『これで叶えられるぞ』と思いました。不安よりうれしい気持ちが大きかったですね」
初心者でも使えるように「ストレスフリーな構造にしました」
ここ近年のキャンプブームと社長の勧めもあり、製作の対象はキャンプ用品にした。なかでも、焚き火台を選んだ理由を聞くと、
「早野研工は鉄を作る会社なので。ネットで調べて、焚き火台が一番しっくりくると思いました」
と、松井さんは話す。
製作期間は3か月ほど。とにかく形を作り、課題を見つけては作り直すことを繰り返した。試作した数は100個を超えているという。
「まず、この形にもってくることが一番大変でした。最初に作ったのは四角い形で、下に空間があってピザも焼ける...みたいなのを考えてましたが、パーツが多く、初心者では使いづらいという課題がありました。ネットでもいろいろ調べて、形を変えたり、重さを軽くしたりと試行錯誤しました」(松井さん)
こだわったのは、初心者でも使いやすい製品であるということ。完成した「Firebase」は、パーツをひとまとめにして持ち運べるため、部品がなくなりにくい。組み立ても、パーツをはめ込むだけなので簡単だ。
「組み立てでガチャガチャひっかかったりするの面倒くさいじゃないですか。そういうところを極力なくしてストレスフリーな構造にしました」(松井さん)
国際見本市でグランプリを受賞した時の気持ちを聞くと、
「その時は全然実感がなかったです。新入社員が初めて作った製品なので、驚いたというよりはおかしいって思いました(笑)最近はちょっとずつ実感がわいてきました」
と松井さん。クラウドファンディングやオンラインショップに寄せられた注文に対応するため、会社では「Firebase」の量産体制に入っているという。
松井さんに、今後のモノづくりへの意気込みを聞くと、
「僕はこういうことがしたくて入社したので、今後もこういう機会があればやってみたいと思います。レビューを聞いて改善点を取り込み、よりいいものを作っていきたいですね。できればFirebaseにつながるHotCampブランドの第3弾を作りたいです」
と話していた。
(会社ウォッチ編集部 笹木萌)
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