「しがらみない」ギルソン新社長の手腕に注目
投資判断の格上げまでいかずとも、内外の証券会社による目標株価の引き上げは、2021年に入って相次ぎ、10社前後にのぼる。3月15日配信のリポートで630円から810円に引き上げたSMBC日興証券は、「足元では石油化学市況の高騰が追い風、長期目線では構造改革に期待」と理由を挙げた。
ちなみに、ギルソン氏への社長交代は2020年10月23日に発表された。ギルソン氏は当時、医療関連資材などの仏ロケット社のCEOだった人で、米国籍も持つ国際人。妻は日本人で日本に住んで働いた経験もある。
以前から欧米化学企業の経営に携わり、改革派として化学業界では知られていたそうだ。ギルソン氏は記者会見で「ポートフォリオ変革に注力する。一部事業の売却もあるだろう」「自分の役割は海外の強化」などと述べていた。
ただ、外国人社長が就任すると言っても、経済同友会代表幹事なども務めた実力者の小林喜光会長(74)は4月以降も留任する。小林会長がギルソン氏の改革を阻むことはないにしても、かつて日産自動車の全権を掌握したカルロス・ゴーン氏のように、しがらみのなさを存分に発揮できるかどうかは、まさにギルソン氏の手腕にかかっている。
一方、中期経営計画は2021年2月25日に発表されたもので、21年4月~23年3月までの2年間が対象。野村証券が指摘したオフィス集約によるコスト抑制は、この計画に盛られている。東京都内の3か所に分散していた本社のオフィスを丸の内に集約するほか、生産自動化などを進めて220億円分を合理化しようとしている。
個別の事業でも、世界シェア首位のアクリル樹脂原料「MMA」について、事業の本社機能をシンガポールに集約し、世界を見渡した迅速な判断に基づいた運営に徹するなどとしている。(ジャーナリスト 済田経夫)