2021年4月1日から、商品やサービスの価格に消費税分を含める「総額表示」が義務化される。店頭の値札や棚札、チラシ、カタログ、広告などに税込価格を表示しなければならなくなるのだ。
1989年4月に導入された消費税は税率3%だったが、97年4月に税率5%に引き上げられ、2004年4月からは税込価格で表記する総額表示が義務化された。しかし、その後の消費税率引き上げを円滑に進めるために、13年10月からの総額表示の義務を課さない特例が導入される。さらに、税率10%への引き上げが2度延長された影響で、特例も延長されてきた。
そして2019年10月、税率10%へ引き上げが実施されたことを受けて特例が失効。今年4月から総額表示が義務化されることになった。
10年以上前に決まった「ゾンビ法」
4月からはじまる消費税分の総額表示の義務化に対して、事業者からは、値上げのような印象を持たれ、売り上げに影響が出ないかと懸念する声がある。全国スーパーマーケット協会や日本チェーンドラックストア協会など、28の事業者団体は2020年8月末、消費税の本体価格表示の恒久化に関する要望書を国に提出している。
なかでも、特に強い危機感を感じているのが、「総額表示を考える出版事業者の会」。出版業界は特に影響が大きいという。
「全商品のカバーやスリップを変える必要があり、返品と訂正のコストで中小事業者は経営破たんする恐れすらある。コロナ禍の現状、ただでさえ売り上げの低下や現場の負担が増している中で、これ以上余分なコストや作業が増えるのは死活問題」
と主張している。
全国商工新聞(2020年11月23日付)によると、1989年4月の消費税導入時、公正取引委員会は「定価1000円、税30円」と内税表示を義務付け、90年1月1日までに新たな定価表示への移行を求めた。
「出版社は既刊本のカバーを刷り直したり、新しい定価のシールを貼ったりして対応し、その負担は1社あたり3623万円(日本書籍出版協会調べ)にのぼり、全体で百数億円の経費がかかったといわれている。
さらに、対応しきれずに既刊出版物2万タイトルが絶版に追い込まれたと報道されている(1994年5月、共同通信)」
と振り返り、「総額表示」の復活がこうした事態を再び招くと警鐘を鳴らしている。