新型コロナウイルスの感染問題が収束しない中で、2度目のお花見シーズンが到来。2021年3月22日、東京の桜は満開になった。
政府が首都圏の1都3県に発令していた緊急事態宣言は、その前日の21日で解除されたが、感染防止のため多くの人は外出自粛を続ける見通しだ。そんななか、小売り各社は「おうちで花見」とうたい、自宅で花見を楽しもうというさまざまな提案をしながら、花見商戦の盛り上げを図っている。
「おうち」で楽しむ「食」のニーズを狙う
大丸東京店(東京都千代田区)は「おうち花見のススメ」と呼びかけ、花見を自宅で楽しもうとPRしている。「今年の正月のおせちの売り上げは例年の30%増と大好評で、おうちで楽しむ食のイベントのニーズは高い」ととらえ、今回初めての企画となる「お花見おせち」を準備した。
高級料亭の料理を詰めた重箱や洋風のオードブル、おせち風の弁当など多彩な商品で、いずれも正月用のおせち以上にカラフルで華やかなのが特色だ。
西武池袋本店(豊島区)では「さくらスイーツで楽しむ『おうち花見』」とうたい、さくらのモンブランやマカロンなど今春限定のスイーツを多数準備し、「さくらまつり」(4月6日まで)を実施している。
ネット注文ができる商品なら宅配で届けたり、自宅近くのセブン‐イレブンでも受け取れるなど、外出を自粛している人も手軽に利用できるよう工夫している。
松屋銀座(中央区)では「MATSUYA SAKURA FESTA(マツヤ サクラフェスタ)」を3月末まで展開中だ。実際に家の中でサクラを飾ってもらおうと、1本1000円でサクラの枝を提供(1日200人限定)。桜色のぐい飲みや桜をデザインしたティーカップなどテーブル周りの商品も充実させている。また「旅行も外出もできないなか、普段よりちょっといいモノを求める傾向が強い」として、手の込んだオードブルや高級スパークリングワインなど「ワンランク上のグルメ」もとりそろえた。
百貨店以外でも、フラワーショップなどを経営する日比谷花壇は「#うち花見」として、さまざまな情報をネット上で提供している。サクラの枝だけでなく、さまざまな花を1本飾るだけでも生活を楽しめるとして、グラスや小瓶で花を生けたり、鉢植えを育てたりする方法などを紹介したり、「あなたの『#うち花見』を教えてください」と情報提供を呼びかけたりしている。
ある小売り関係者は、
「コロナ禍がいつ収まるか、わからないなか、わざわざ人混みの名所に足を運ばなくても花見を楽しめる『おうちで花見』は新しい生活様式の一つになるかもしれない」
とも話している。(ジャーナリスト 済田経夫)