北海道の民泊業者にも大きな痛手
海外客の断念で、観光業者は大打撃を受けている。新聞各紙が取りあげた声を紹介しよう。
東京都台東区の浅草寺のすぐ脇の旅館「浅草指月」は、和風の客室やお風呂が売りで、コロナ禍前は外国人客であふれていた。経営者の飛田克夫さん(83)はこう肩を落とした。
「もともと日本人が魅力を持つような造りではない。五輪で少しでも原状回復できると思っていたのに...。海外に『日本は危険』という印象を与えてしまう。コロナが収束し、観光客の受け入れが再開した後でも当分戻ってきないかもしれない」=東京新聞(3月21日付)「『海外客』期待絶たれ」
浅草などで人力車ツアーや日本文化体験講座を企画する「時代屋」の藤原秀則代表(65)は、残念がる一方、こう前を向いた。
「最悪、無観客でも開催すればムードが盛り上がるので、国内客向けの企画を考えたい」=同紙
東京都台東区で旅館を営む澤功さん(84)も、五輪のインバウンドに期待していた。
「うちは海外のお客さんが多く、延期前の大会期間中は全部屋が予約で埋まっていた。3分の2のお客さんが予約を1年延長してくれたが、すべてキャンセルになるだろう。仕方ない。耐えるしかない」=毎日新聞(3月21日付)「苦肉の策『妥当』『残念』」
影響は東京にとどまらない。「北海道民泊観光協会」代表理事で、札幌市で民泊を経営する南邦彦さん(46)も、こう漏らした。
「五輪までは何とか頑張るという同業者が多かったけど、これで廃業や賃貸住宅への転換が加速する可能性がある」=読売新聞(3月21日付)「『おもてなし』したかった」
一方、企業のほうのダメージも大きい。読売新聞(3月21日付)「観光戦略仕切り直し」がこう伝える。
「五輪を控え、多くの企業が積極的に投資してきた。三越伊勢丹ホールディングスは、羽田空港のターミナル運営会社などと共同で、三越銀座店(東京都)で2016年から免税店を展開している。しかし、高級ブランドの一部が今年3月末の退店を決めた。松屋銀座(同)は昨春、訪日客向けの専用VIPルームを新設したが、現在利用は低迷している」
(福田和郎)