変異ウイルスの今そこにある危機 尾身氏に激怒された菅首相が「あきらめ」の宣言解除(1)

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神奈川・千葉の乱で動きを封じられた小池都知事

首都圏知事の反乱にあい、動けなかった小池百合子都知事
首都圏知事の反乱にあい、動けなかった小池百合子都知事

   その菅義偉首相に「待った!」をかけたのが、小池百合子都知事だった。1都3県の知事が結束して政府に解除反対の直訴をする構えを見せたことで、首相は再延長を決断した。しかし、今回は知事たちに再延長を求める声は出なかった。小池知事は身動きが取れなかったのである。いったい、何があったのか。

   朝日新聞(3月18日付)「『自粛疲れ限界』4知事、崩れたワンボイス」が知事たちの内幕をこう伝える。知事たちのワンボイスが完全に崩れ去ったきっかけは、3月3日にあった4都県知事の非公開会議だった。

「会議の出席者によると、宣言延長を政府に要請しようとする小池氏の案に、(選挙区が神奈川の)首相に近い黒岩裕治・神奈川県知事は『総理の判断を仰ぐことが筋。ワンボイスでなくても良いと思っている』と異議を唱えた。千葉県の森田健作知事も『総理が最終的に判断すると述べている』としたうえで、『4都県が一緒くたになる必要もない』と黒岩氏に同調した。共同での政府への要請は見送られた」

   結局、今回の解除について小池都知事が自らの考えを明らかにすることはなかった。

   こうした政府と知事たちの確執に呆れた政府対策分科会の尾身茂会長が、菅義偉首相に対して怒りを爆発させる場面があった。日本経済新聞(3月18日付)「収束見えぬ宣言全面解除 首相『もう出したくない』」が、こう伝える。

「『知事に頼るからこうなった。首相は判断ができない』。尾身氏はおおみそかの12月31日(2020年)、非公式会合で不満を爆発させた。東京都と政府の連携不足への怒りだった」

   昨年12月中旬、政府内の見通しは楽観的だった。感染は年末年始に収まると菅首相も読んでいて、国民に強くアピールすることなく、対応を知事たちに任せていた。実際には忘年会が主因とみられる感染の急拡大が起きた。

   日本経済新聞は、政府と知事たちの連携の「目詰まり」が高齢者施設の相次ぐクラスターを起こさせてしまったと指摘する。

「『3月末までに約3万の高齢者施設で検査をする』。首相が3月5日の記者会見で表明した高齢者施設の検査は、昨年冬からの懸案だ。高齢者への広がりを阻止しようと、首相が施設への検査を指示しても、(保健所などが動かず)検査は進んでいなかった。都老人保健施設協会の幹部は『万が一のことが起きたら経営できなくなるリスクがある。検査しない施設を責められない』と実情を打ち明ける」

   つまり、首相が旗を振っても現場の知事たちとの連携が悪く、保健所を動かせないうえ、感染者が見つかったら経営危機に陥るという高齢者施設の抵抗にあい、検査が進んでいないのが実態だというわけだ。尾身氏は、こうした連携の悪さに激怒したのだった。

(福田和郎)

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