江戸時代に創業したIHIのもう一つの強み
2021年3月期においては、この主力の航空部門が苦戦を強いられた。旅客需要の低迷によりエアライン各社の経営が悪化しており、IHIのエンジンやスペアパーツの販売が大きく減少してしまったのだ。
国内便は細々ながらも運航は続いているが、国際便の不透明感は大きく、国際航空運送協会(IATA)の予測によれば、2019年の水準への回復が想定されるのは2024年である。
野村証券の2021年3月9日付のリポートでは、同日にIHIの井出博社長とのミーティングがあり、航空機関連の事業環境については「ワクチンの普及などにより旅客需要に回復の可能性はあるものの、まだ楽観的にはとらえられないとして、慎重な見方が示された」と記している。そうしたなか、当事者がやや明るい見通しを示した日経報道に投資家が反応した。
一方、江戸時代に始まるIHIは古くから所有する土地を生かした不動産事業という強みもある。2021年3月期に全体としては営業黒字を確保する見通しであるのも、不動産事業が下支えしていることが大きい。
現在、賃貸収入を得ている不動産以外にも東京都や愛知県に今後開発や売却を進める物件がある。こうした不動産の収益をいかに将来の成長につながる投資に振り向けられるか――。投資家が注視しているとの見方もある。(ジャーナリスト 済田経夫)