少子高齢化が進み、とくに地方圏で地域づくりの担い手不足が課題となっているなか、近年、その課題解決に資する概念として「関係人口」が注目を集めている。
民間調査会社の株式会社ブランド総合研究所は、県外の応援者らの地域貢献につながる意識を数値化した「関係人口の意識調査」を実施。2021年3月15日に発表した。関係人口の意識をめぐる調査は初めてという。
調査によると、最も関係人口が多いのは福島県だった。
地域と継続的につながりを持つ機会やきっかけを提供
「関係人口」は、総務省が2018年度に「『関係人口』創出事業」を、2019年度および20年度に「関係人口創出・拡大事業」を実施。多くの人々が関係人口として、地域と継続的につながりを持つ機会やきっかけを提供する地方公共団体を支援している。
また、同省では「地域への新しい入口 関係人口ポータルサイト」というウェブサイトを設け、概念の浸透に努めている。このサイトによると、関係人口の定義は、次のとおりだ。「『関係人口』とは、移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指す。
地方圏は、人口減少や高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面しているが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、『関係人口』と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されている」
ブランド総合研究所の「関係人口の意識調査」は2021年2月17日~23日に、インターネットで実施。全国の18~79歳の男女2万508人から回答を得た。地域との関係性、定住意欲、移住意欲、訪問状況など計74項目の答えから推定関係人口を算出した。
調査では、各都道府県の出身者(居住者を除く)と、応援者(居住者および出身者以外にその都道府県を「応援したい」と思っている人)とを「関係人口」としている。
2位沖縄県、3位北海道......
都道府県で最も「関係人口」が多かったのは、福島県で1229万人。次いで沖縄県の950万人、北海道の756万人と続いた=左の表参照。福島県の関係人口は居住人口(約182万人)の6.8倍。これについて、ブランド総合研究所は「ボランティア活動や寄付、産品購入などの意欲のある人が多い傾向」があったとしている。10年前の東日本大震災の復興支援を心がける人が多いとみられる。沖縄県は、観光意欲のある人が62.2%と、全国で最も高い。
何らかの関係がある人に「応援したい都道府県とは、どのような関係がありますか(居住や出身地以外)」と聞くと、最も多かったのは「家族や親せきがいる」(22.7%)で、次いで「観光で何度か訪れた」(16%)、「過去に住んでいた」(15.9%)、「知人や友人がいる」(14.6%)が上位を占めた。
「一度だけ観光で訪れた」(4.6%)は少なく、ブランド総合研究所は「一度だけではなく、何度も観光で訪れることにより、『応援したい』という気持ちが高まり、関係人口となることにつながることの表れだろう」と分析している。
応援したい都道府県との関係を聞くと、「これまで特に関わりがない」または無回答とした人が32.8%にのぼっており、特別な関係がなくても「応援したい」と感じている人も少なくない。
関係人口の移住意欲高いのは福岡県
一方、「関係人口」がある人による、関係する都道府県への訪問状況はどうなっているのだろう――。「ほとんど毎月」が7.8%、「年に数回程度」が19.8%、「年に1回程度」が13.7%。合わせて41.3%が年に1回以上、訪問している。
「ほとんどない」(22.6%)と「ない」(15.3%)を合わせた37.9%の人は、必ずしも定期的に訪問しているわけではないようだ。
調査では、関係人口の移住意欲も調べた。最も高いのは福岡県で「すぐにでも移住したい」(9.5%)、「いつかは移住したい」(18.9%)を合わせ28.4%が、移住への意欲を表明。次いで「すぐにでも移住したい」県は静岡県で5.9%、長野県の5.7%が続いた。沖縄県は「すぐにでも」は5.3%で、静岡県や長野県より低かったが、「いつかは移住したい」では47都道府県で最も多い19.2%だった。
移住意欲が高い都道府県の3位以下は、3位神奈川県(24%)、3位東京都(24%)、5位大阪府(23.7%)、6位兵庫県(22.5%)など。大都市を有する地域が上位を占めた=右の表参照。
関係している都道府県に対して、最も「したい」と思う行動は「観光に行きたい」(44.1%)で、次に「帰省・訪問したい」(27%)。調査によると、年代が高くなるほど「観光に行きたい」と答える人の割合が高くなっている。「農林水産品や加工食品を購入したい」(16%)は、北海道や東北と関係がある人が特に希望しており、これも年齢が高くなるほどその気持ちが強くなる傾向にある。「ふるさと納税をしたい」(14.9%)は、年代別では20代、30代が40代以上より希望する人が多いという。