リスク説明のタイミングによる受け止め方の違いがポイント
実際に重要事項説明を受けると、特に売買契約の場合は長時間に及ぶことも珍しくありませんから、一つひとつの項目について、集中力を切らさずに都度質問があれば差し挟んで、などと対応していくのはとても大変な労力を必要とするものです。
したがって、この重要事項説明を受けるタイミングというのも、この新しく加わった水害リスクについてイメージするのに重要なポイントとなるだろうと思われます。
というのも、このネガティブな事項について、物件購入および賃貸契約の比較的早い段階でも(他にも候補がいくつかあって検討している段階のイメージです)重要事項説明を受けることは想定されるため、仮にハザードマップで水没可能性が高いとされる色分けがされていて説明を受ければ、その段階で購入でも賃貸でも候補から除外される可能性が高いと考えられます。
一方、周辺環境や価格、利便性や交通条件などから候補内で最も購入もしくは賃貸に最も前向きに検討したい物件である場合は、水害リスクに限らずネガティブファクターを強く意識せずに(ハザードマップ上では該当するが発生するかどうかわからない水害リスクでこの物件を諦めたくないという感情が発露するため)が判断してしまうこともあり得ます。物件購入や賃貸の契約を結ぶ判断をするうえで、説明を受けた際の受け止め方がポイントということです。
もちろん発生規模にも寄りますが、水害は発生すると物件の使用に重大な阻害要因となるだけでなく、居住者の生命・身体にも影響する可能性が高いリスクですから、物件を買う、借りる際の前提条件としてハザードマップを確認するという姿勢が必要です。
国交省では、「ハザードマップポータルサイト」を公開していますから、ネットから容易に確認することができます。
このサイトでは水害リスクだけでなく、土砂災害、高潮、津波、道路防災情報も併せて確認できますから、現在住んでいるところがどのような自然災害のリスクがあるのか(またはないのか)について、調べておきましょう。
なお、この制度変更に先立って2020年6月には都市再生特別措置法が改正され、土砂災害特別警戒区域などのいわゆる「災害レッドゾーン」と呼ばれる区域では、学校や店舗などの建設が原則として禁止されました。より安全に、より安心して住むことができる社会を目指す姿勢は、はっきり示されています。(中山登志朗)