新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、河野太郎・担当大臣が「ワクチン休暇」を導入したいと発言したことが波紋を広げている。
河野大臣は「経済界に協力を求めていく」と言うが、
ネットでは、
「有休さえとりにくい会社がたくさんある現状をわかっているのか」
「休暇をとらなくてはならないほど、ワクチンの副反応が強いのか?」
と批判の声があがっている。
土日の接種は「密」になるので平日に休む必要が...
「ワクチン休暇」がクローズアップされることになったのは、2021年3月14日夜、ワクチン担当の河野太郎規制改革相が、自身のインターネット番組で呼びかけたのがきっかけだ。
日本経済新聞(3月15日付)「ワクチン休暇、河野氏が検討 現役世代の接種巡り経済界と調整へ」が、こう伝える。
「河野太郎規制改革相は3月14日、新型コロナウイルスワクチンを接種したり、接種後に副反応が出たりした場合の休暇制度を検討する考えを示した。会社員ら現役世代の接種が始まる前に経済界と調整する方針だ。自身のインターネット番組で『現役が打つときになれば経済界と相談したい』と語った」
ワクチンは原則、住民登録をしている自治体で接種する。すでに医療従事者の接種が始まっているが、一般の人は一番早い市町村で4月12日に高齢者から始まる。日程については各市町村に委ねられているが、平日だけでなく、土日祝日も行わないと迅速に接種が進まないところが多い。
しかし、自宅から離れた場所に通勤する会社員らが、平日に居住する自治体の接種会場に行かず、週末に集中すると、接種会場が大混雑して「密」になる事態が想定される。できるだけ多くの会社員らに平日の勤めを休んでもらって接種してほしいというが政府の考え方だ。
日本経済新聞が続ける。
「河野氏は『会社にワクチン休暇をお願いしたり、副反応で休むことを認めてもらったりすることをいま検討している』と説明した。『会社の健康保険組合などで(集団で)打ってもらうこともあるかもしれない』とも話した」
河野大臣の提案には、さっそく加藤勝信官房長官が政府として推進していく方針を明らかにした。共同通信(3月15日付)「ワクチン休暇検討 加藤氏、接種普及へ協力要請も」が、こう報じる。
「加藤官房長官は3月15日の記者会見で、ワクチン接種の普及に向け、接種時間の確保や副反応に対応するため、企業側に休暇取得への協力を求める可能性に言及した。『安心して接種できる環境整備が重要だ。経済界への働き掛けや国家公務員の扱いを含め、どのような対応が可能かを検討したい』と述べた。同時に『接種の強制にならないよう、しっかりと留意するのは当然だ』とも指摘した」
大阪府の吉村洋文知事も賛意を示した。デイリースポーツ(3月15日付)「吉村知事 働く世代に『ワクチン休暇』必要性 河野大臣案に賛同」が、こう伝える。
「大阪府では5月以降に高齢者への接種を開始する予定で、その後、それ以下の年代に移行する。吉村知事は『若い人の中には大阪府内の地方に住み、仕事で都市部に来る人が多い。若い世代にワクチンを行き渡らせるためには河野大臣も言うようなワクチン休暇も大事になる』と理解を示した。平日は仕事をする現役世代が多いことから、『企業での集団接種も重要だ。経済界に働きかけたい』と大阪府として各企業に環境整備を訴える方針を示した」
コロナ休暇は「有給」か「特別」か?
まだ、「ワクチン休暇」の具体策が見えてこないが、考えられるのは「有給休暇」で取るか、「特別休暇」で取るかだ。ネット上では「特別休暇でとる仕組みを作ってほしい」という声が圧倒的に多い。
「特別休暇」は、「有給休暇」のように法律(労働基準法)で休みをとっても給与が支払われる権利として認められている休暇ではない。勤務先の企業が福利厚生の一部として就業規則に定めている休暇のことだ。どの企業にもある休暇ではない。
たとえば、「リフレッシュ休暇」(一定期間以上在籍する社員に対して、リフレッシュのために与えられる)、「バースデー休暇」(誕生日を休みにする)、看護休暇(育児、介護をする社員に育児介護休業法の育児休暇、介護休暇以上の日数が与えられる)、「慶弔休暇」(結婚、死亡などの出来事に与えられる)、病気休暇(重大な病気などに与えられる)、「ボランティア休暇」(ボランティア活動、社会貢献活動のために与えられる)などがある。
こうした企業ごとにある「特別休暇」に「コロナワクチン接種休暇」を加えてもらおうというわけだ。
ところで、日本はワクチン接種を希望する人の割合が国際的に低い。日本テレビ(2月10日付)「ワクチン接種 日本は他国より慎重姿勢」によると、フランスの調査会社「イプソス」が今年1月末に、日本、米国、英国、ロシアなど15か国を対象に、ワクチン接種に関する世論調査を行ったところ、日本は他の国と比べて、接種に慎重な姿勢をもつ人が多かったという。
日本でワクチン接種に「強く同意する」と答えた人は19%で、ロシアに次いで下から2番目だった。接種を受けたくない理由として、日本で最も多かったのは、「副反応が心配」で66%にのぼり、米国や英国の2倍となった。
毎日新聞(2月13日付)の世論調査でも、「自分が接種を受けられる状況になった時、どうするか」との問いでは、「すぐに接種を受ける」と答えた人は39%にとどまり、「急がずに様子を見る」が52%だった。年代別でみると、「すぐに接種を受ける」と答えた人は、60代は53%だが、18~29歳(29%)、30代(29%)、40代(32%)、50代(39%)と現役世代の接種意欲が低いのが特徴だ。
産経新聞の最新の世論調査(3月16日付)でも、「ワクチンを接種する」と答えた人(75.8%)が8割弱いたが、「接種しない」という人(19.9%)が2割近くもいたのだ。
(福田和郎)