持ってる知識でこんなに違う! デキる営業とダメな営業の「差」はどこだ? (藤崎健一)

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   前回は、スタジオ02の大関暁夫社長から営業活動における営業知識の重要性について解説してもらいました。

   営業のオンライン化で「御用聞き営業」が存在しなくなる分、従来以上に営業知識の活用が重要になってきます。今回はそんな観点で、すぐに使えるオンライン営業における営業知識活用の具体的な活用例をご紹介しましましょう。

  • デキる営業マンとの差はどこにある?
    デキる営業マンとの差はどこにある?
  • デキる営業マンとの差はどこにある?

辣腕営業がやっているニュース情報の提供

「きょうの新聞に、『巣ごもり消費、きしむ物流 コロナで様変わりの新年』に掲載されています。無人搬送車販売のご参考情報になるかと思いましたので、お知らせします。」

   読者のみなさんも営業マンから、この手のメールやSNSを受け取った経験があるのではないでしょうか。受け取って嫌悪感を抱く方はまずいないでしょう。むしろ、「ありがたい」と感じる方のほうが多いと思います。

   記事を探す手間が省力化できた、私のことを気にかけてくれている、と感じることもあるでしょう。「手間を掛けてもらって、申し訳ない」とすら感じる方もいるかも知れません。

   これは営業知識(情報知識)を活用したメール活動の一例ですが、このような相手に喜ばれるあるいは関心をもたれる知識を盛り込んだメール送付が、オンライン営業では重要です。

   売り込み色満々のメールでは、相手も拒絶感を持ち、心を閉ざしてしまいます。聞きたい情報もヒアリングできなくなるでしょう。売り込みではなく、お客様にとってお役に立つ情報を提供する。そのために営業知識を有効に活用することが、信頼関係を作るうえで大切なのです。

   実例を紹介します。情報セキュリティに関するサービスを提供しているA社では、コロナ禍でも業務の生産性向上にお役立ていただけるよう、テレワーキングのセキュリティと利便性向上を実現するためのお客立ち情報をご紹介して、商談数を増やしています。

   同社は政府による2度目の緊急事態宣言の発出直前から、メールでテレワークのお役立ち情報を提供し始めました。業務を完全テレワーク化できない企業にとって、心配のタネは業務効率の低下です。そんなお悩みの払拭にと、テレワークに起因する業務効率悪化の防止策とそれを自社のサービス導入によって解決した事例などの情報提供をしたのです。

販売後の「放置プレー」をなくしたことでオンライン受注が激増

   A社の情報提供の方法は、WEB閲覧にとどまらず、詳細資料を無償でダウンロードできるなどの工夫をして、利用者の利便性にも工夫を凝らしました。A社の製品はなかなか見向きされにくい高額なものなのですが、名刺交換した見込客や休眠顧客など約1万件のメール配信に対して、約3割の資料ダウンロードという大きな成果につなげました。

   当然、課題解決事例などをダウンロードしたお客様からは多くの問い合せを獲得し、商談に結び付けることに成功しています。この事例のポイントは、売り込みメールではなくタイムリーに営業上情報知識(この場合は経験知識)を提供した点にあります。日頃から社内で導入事例などの情報蓄積に努め、その情報知識を有効に活用した好事例であるといえるでしょう。

   もう一つ事例を紹介します。業務用のコーティング・塗料などの資材を製造販売しているB社のケースです。同社が扱う製品は、特殊施工をする際に使われる業務用資材です。そのため、施行の工期ごとに発注する企業や最初から見込数量で一括発注される企業など発注方法が様々で、顧客の在庫ストックが把握しにくくこまめな営業が必要でした。

   ところが、テレワーク導入で販売後の営業接触がしにくくなって、お客様側の状況を把握しづらい状況に陥りましたそこで、販売後の経過日数に応じて「フォローレター」を出すことにしました。

   具体的内容は、製品を使用した感想を伺う簡易アンケートの体裁をとってお客様の状況ヒアリングと追加オーダーにつなげようというものです。メールの発信者名を営業担当名にし、アンケートと共に最終発注日からの経過時間をお知らせして在庫切れによる業務停滞を未然に防止を呼び掛けるという、営業知識レターです。

   その結果、36.2%のお客様から返信がありました。しかも大半は、配信後わずか2日以内というスピード回答でした。アンケートの回答から製品やサービスの改善点を把握できただけでなく、追加オーダーにも繋がりました。この事例のポイントは、顔が浮かぶ営業担当者から、販売後のアフターフォローとして相手を慮る情報を提供した点にあります。

   これにより、多くのお客様からの返信を獲得しリピート注文につなげることができたといえます。

「返報性の法則」を促す「お役に立ちたい」メール

   人から何かをしてもらったとき、「お返しをしないと気が済まない」と感じる心理のことを「返報性の法則」と言います。たとえばスーパーマーケットなどの試食コーナーで、店員から勧められて試食すると、「食べさせてもらったのだから、買わないと悪いかな」というアレです。

   「無償で何かをしてもらう」ことによって返報性の法則が働き、お返しをしなくちゃいけない、という心理が生じるのです。さらに相手のことを「心配しています」という気持ちが加われば、より一層「お返し」の確率は高まるのです。

   A社の事例では、コロナ禍という緊急事態下での心配事に先回りする配慮が、多くのレスポンスにつながりました。B社のメールには、「在庫切れで業務が滞る前にお届けします」と相手を慮るメッセージがポイントでした。メール営業で心掛けなくてはいけないことは、中身が相手のお役に立つ知識情報であるということ、メール文面の端々から相手のことを思っている気持ちがうかがわれることです。

   メール営業では、「売りたい」を捨てて「お役に立ちたい」を前面に活動することが、結果的には成果につながるのです。(藤崎健一)

★大関暁夫氏、藤崎健一氏が共同で、定期的に「成功するオンライン営業」に関する無料セミナーを開催しています(主催:株式会社カレン)。3月の開催は、17日、25日です。開催日時・内容詳細およびお申し込み要領は、こちらから。
大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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