最後の難関「デブリ」の調査は一歩一歩
瓦礫の撤去、使用済み核燃料の取り出しと進捗状況の差はあるが、少しずつ廃炉のステップは進んでいる。最後の難関が「デブリ」の撤去だ。溶けだした核燃料と構造物が一体となった堆積物だ。非常に高い放射線量なので、まずデブリに触るという重要調査が進んでいる。
2号機と3号機を担当している東芝の技術者たちが「サソリ」と名付けた自走型ロボットによる調査のあらましが詳しく書かれている。
サソリはレールの途中で止まり、メディアの中には「目的を達しなかった」と報じた新聞もあったが、「調査そのものは成功した」と東芝の技術者は考えている。かなりの堆積物が詰まっているという情報自体が、次の調査方法を決める重要な知見になったと。
「これは自分たちの持っている事業の責務なんだ」と一人は語っている。原子力プラントを設計、開発したメーカーとしての責任を彼らは感じている。
「この会社にいる限りは、何らかの形でずっとこの仕事にかかわっていくんだろう」
40年かかると言われた廃炉作業。事故の発生から10年が過ぎた。あと30年で終わるのだろうか? その見通しは立っていない。しかし、我々は折に触れて、その行方を見守ることが必要なのではないだろうか。原発から遠く離れたところで、その電力を享受してきたのだから。(渡辺淳悦)
「廃炉」
稲泉連著
新潮社
1600円(税別)