変異ウイルスが猛烈な勢いで拡大している。首都圏に出されている緊急事態宣言の解除はできるのだろうか。そして、東京五輪・パラリンピックは開けるのだろうか。
子どもにも感染、ワクチンでは安心できない
変異ウイルスの感染が、じわじわと広がっている事態を医療の専門家はどう見ているのか――。
変異ウイルスが子どもにも感染しやすいといわれることにつて、3月11日放送のTBS系情報番組「グッとラック」の取材を受けた東邦大学の小林寅喆(いんてつ)教授(感染防御学)は、こう解説した。
「変異ウイルスは体内の抗体が認識できないので、発症してしまうのです。いまのワクチンでも60~80%は効くであろうと見られていますが、効き目が下がってきたら、新しいワクチンに組み替えていかなければなりません」
テレビ朝日系の報道ステーション(3月8日放送)の取材を受けた国立国際医療研究センターの忽那賢志(くつな・さとし)医師は、こう説明した。
「変異ウイルスは、子どもに感染しやすいというよりは、それだけ感染力が全体的に強くなっているということかもしれません。ブラジル型、南アフリカ型の中には『免疫逃避』(E484K)という変異が入っています。この変異は、一度感染して体内に抗体ができた人でも再び感染する可能性があり、ワクチンの効果が薄れる可能性があると言われています。やはり、なるべく早く変異ウイルスを検出する体制を作ることが重要です」
と強調するのだった。
ワクチンだけでは安心できないというわけだ。
ギリギリ5、6月まで待つIOCの煮え切らなさ
では、医療関係者らが懸念するように、このまま変異ウイルスが日本国中に広がった場合、東京五輪・パラリンピックの開催はどうなるのか。
3月11日、国際オリンピック委員会(IOC)はオンラインで総会を開き、トーマス・バッハ会長(67)を再選した。バッハ会長は東京五輪開催について、
「7月23日に開会式が行われることに疑う理由はない。問われているのは開催の可否ではなく、どのように開催するかだ」
と、相変わらず強気の挨拶をした。
しかし、オンラインの記者会見では途端に弱気に転じた。毎日新聞(3月11日付)「バッハ氏、東京オリンピックの国内客の受け入れ判断先送りを示唆」によると、
「3月3日に開いた東京都の小池百合子知事らとの5者協議では、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、海外客の受け入れ可否は3月内に、国内客の取り扱いは4月中に判断することで合意した。
バッハ氏は『どれほどの観客を入場させるか、私たちはドアを開けておかなければならない。5月や6月に起こった出来事を考慮に入れるためで、意思決定にはいくつかのステップが必要だ』と語り、直前まで状況の改善を待って判断する姿勢をうかがわせた」
という。
つまり、コロナ禍の状況がどうなるかわからないので、観客問題などの重要案件をギリギリの5月や6月まで待つというのだ。
日本政府は、すでに海外客を入れない方針を固めている。遅くとも4月初めまでに観客数の問題を決めておかないと、チケットの販売やキャンセルで大混乱が起こり、コロナ禍の具体的な感染対策も決まらない。
このIOCの煮え切らない態度を、どうみるべきだろうか。
(福田和郎)