変異ウイルスが猛烈な勢いで拡大している。首都圏に出されている緊急事態宣言の解除はできるのだろうか。そして、東京五輪・パラリンピックは開けるのだろうか。
尾身会長「間違いなく変異ウイルスが主流になる」
「間違いなく既存株に取って代わるプロセスが始まっている。早晩、変異株が主流になると考えておいたほうがいいと思います」
変異ウイルスの脅威について政府分科会の尾身茂会長は、2021年3月10日の衆議院厚生労働委員会で、厳しい見方を示した。
「今のところ日本では、変異株の感染力がヨーロッパで言われているほど高くなったという直接のエビデンスはないが、そうなるだろうと想定して、大学や民間の検査機関をすべて動員して変異株のモニタリングをオールジャパンで強化していくことが急務です」
と、続けた。
2月21日に期限を迎える首都圏の1都3県の緊急事態宣言の3度目の延長の可能性をもほのめかし、このままでは東京五輪・パラリンピックは無観客でも開催できない状況に、いよいよ追い込まれかねない。
変異ウイルスによる緊急事態宣言の期限延長に、
「客観的、社会的に説明がつかないような仕方での解除や延長はやるべきではない。感染状況も大事だが、医療への負荷がより重要になることも考慮しながら判断することになる。ステージ2の方向に向いていけば解除となるが、逆に状況がどんどん悪くなれば、延長は当然のこと」
と、政府分科会の尾身茂会長は述べた。
日本医師会の中川俊男会長も3月10日に記者会見を開き、
「全国各地で変異株が確認され、首都圏では第3波が下げ止まりから横バイ、あるいは増加の兆候も見られる。第2波の下げ止まりが続き、第3波につながった昨年(2020年)の9、10月によく似ている。リバウンドによってさらに大きな第4波を招く恐れがある。期限を定めず宣言を延長して、データを見ながら決断するのがあるべき姿だ」
と、「再々延長」を示唆した。
感染状況をみると、東京都の新規感染者数は3月11日に335人だった。東京都では緊急事態宣言の解除の目安の一つに、「直近の1週間の感染者数が前の週より7割」をあげているが、3月11日までの7日間平均は前週の101.5%となり、なんと増加に転じてしまった。
小池百合子都知事は記者たちの取材に、
「下げ止まっていないので、(増加傾向にならないよう)何とか皆さんの協力をいただきつつ、医療提供体制をさらに強化していきたい」
と危機感をあらわにした。