事故前にいた職員は4分の1に
一部地域の避難指示解除をいつにするかが苦渋の決断だったという。賠償の期限や仮設住宅の廃止とも絡むからだ。震災当時いた職員はもう半分もいない。宮口さんも二本松市に家を建てた。「一刻も早く帰還困難区域の全体の除染や家屋の解体に向けた方針を示してほしい」と訴えている。
今井さんが被災地自治体職員の調査データを分析している。正職員は半数で、そのうちさらに半数が事故後に採用された職員だ。つまり事故前から働いている職員は4分の1だ。
事故直後に中途退職者が多かったからである。50代の管理職が多く、行政運営にも支障が出た。応援職員(任期付採用職員と他自治体からの派遣職員)でカバーしたが、岩手県、宮城県では2015年をピークに減少傾向にあるが、福島県はその後も増え続けている。
今や浪江町では半数が、大熊町でも4分の1が応援職員だ。復興のステージが上がると、ますます業務量が増え、応援職員も増えていくと今井さんは推測している。
通読して感じたのは、自治体職員のストレスの激しさだ。住民のやり場のない怒りや不安が彼らにぶつけられる。「自分も被災者なのに」と言えない苦しさ。中途退職者の多さがそれを物語っている。
東日本大震災を教訓に、素早く広域的な自治体職員の応援体制が構築できないものだろうか。日本全国、どこが被災自治体になるのかわからないからだ。(渡辺淳悦)
「原発事故 自治体からの証言」
今井照・自治総研 編
筑摩書房
880円(税別)