NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、NTTドコモ・ベンチャーズが、投資先のベンチャー企業やスタートアップ企業の紹介や、2021年のベンチャー支援の活動方針を示す「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2021」を、2021年3月9日に開催した。
今年のテーマは「Adapt To The Future ― 新しい日常、その先へ」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、初めてオンラインによる開催となった。
NTTドコモの井伊社長、スタートアップへの期待表明
NTTドコモ・ベンチャーズは、NTTグループとスタートアップ・ベンチャーコミュニティーを結ぶ役割を担う投資ファンドを運営しており、この日はカンファレンスに先立ち、報道機関向けに出展企業を紹介するメディアツアーを実施した。
同社の稲川尚之(たかゆき)社長による基調講演でカンファレンスが開幕すると、冒頭で親会社のNTTドコモ、井伊基之社長から寄せられたビデオメッセージを紹介。井伊社長は、新型コロナウイルスの影響でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、人々のライフスタイルやワークスタイルが大きく変化したことを指摘。「とくに近年、多くの新しいトレンドや、ライフスタイルが若いスタートアップ企業の新しい挑戦から生み出される」と、DXを進めるうえでスタートアップ企業が果たす役割の大きさを強調した。
井伊社長はまた、NTTドコモについて「NTTの完全子会社になり大きな変化を迎えようとしている」と現状を説明。その変化を成功させるためにイノベーションが必要であり、そのイノベーションは「自分たちにない新しいアイデアを持った人々と出会うことで実現する」と話した。
NTTドコモ・ベンチャーズが、「イノベーションの引き金となる存在」であるスタートアップ企業と出会えることに期待を表明した。
「可能性あるテクノロジーに積極的に投資拡大」
井伊社長のメッセージを受け、NTTドコモ・ベンチャーズの稲川社長の基調講演も、イノベーションこそが近年の急な変化に適切な対応を可能にすることをアピールして始まった。
稲川社長は、予測できない変化が一気に押し寄せた2020年を振り返りながら、新しい日常とその先の世界を決めるのは、変化とイノベーションであることを力説。コロナ禍にあったが、グローバルの最先端を追い欧米スタートアップ4社をはじめ、さまざまな企業に投資。本格化を迎えた5G時代に求められる先進技術領域をカバーしたという。
4社は「5G時代に求められる先進技術やビッグデータ、DXソリューションの領域」で、この日はデータ活用とDX領域を担うスウェーデンのCrosser Technologies(クロッサーテクノロジーズ)と日本のストックマークの2社に、新たに出資することを明らかにした。
2021年の活動について稲川社長は、
「未来を見てICT(情報通信技術)の可能性を広げるテクノロジーに対して積極的に投資を拡大していく。その中で、将来社会に大きなインパクトをもたらす3つの領域『スマートシティ』『スマートファクトリ』『ヘルスケア/ライフサイエンス』を重点領域として抽出。スタートアップとドコモ、NTTグループとの橋渡し役として『Adapt』していく企業を応援していきたい」
と話した。
先進技術を有する3社が出展
カンファレンスに先立つメディアツアーではNTTドコモ・ベンチャーズが出資した英国のSenseye(センサイ)と、日本のRevComm(レブコム)、新規に出資したクロッサーテクノロジーズの3社が出展した。
クロッサーテクノロジーズは、製造業向けにエッジ処理型データ活用プラットフォームを提供。このプラットフォームは、データの発生源や活用場所に近いシステムやネットワークの終端部分(エッジ)にリアルタイムエンジンを実装しており、機械の高速なデータ処理や制御を実現する。
RevCommは、音声解析AI電話などを提供。発話内容をデータ化し解析することで電話応対の品質向上に実現している。出展ブースでは電話応対を評価するデモンストレーションを実施した。
Senseyeは、機械学習を活用した製造業向け自動予知保全ソリューションを提供。ブースでは、産業機械を自動監視し故障時期や耐用年数の予測が可能になるソリューションを披露した。