金融市場は常に先、先を見る
コロナ禍による経済の低迷が続くなか、超金融緩和で金利を抑え込みつつ、緩和マネーで株高を演出する日米に通じる構造は変わるのか。バイデン政権は「雇用回復へ大型経済対策は必要」(イエレン財務長官)との立場だが、身内からも民主党の経済政策に影響を与えてきたサマーズ元財務長官が米紙で「1.9兆ドルの対策は過大で、経済の過熱を招きかねない」と異を唱え、「新旧財務長官の論争」と話題になっている。
前年のコロナ禍による物価下落の反動に加え、大規模な財政支出の本格化で、4月にはインフレ率が一時的に2%を超えるとの観測が市場で強まっており、長期金利の先高観は強まるばかりだ。
米国に比べて景気回復への期待が鈍い分、日本の金利上昇はまだ目立たない。このため、日米の金利差が拡大し、高金利のドルが買われて外国為替市場では円安・ドル高が進んでいる。円安=日本の株高という連想が働くが、それも程度次第。日銀は3月の金融政策決定会合で金融政策の点検結果を公表するが、株価上昇を受けて緩和の微修正に動くとの観測も、このところの市場の動揺を受けて後退している。
金融市場は常に先、先を見る。新型コロナウイルスのワクチン接種の効果が出てくれば、経済活動は正常化に向かうと見越し、今の金融緩和は続かないとみる。また経済活動活発化でインフレ懸念が出てくるのに対応した金利上昇は自然な反応ともいえる。
問題は金融緩和や財政出動を、どのようなペースで正常化させ、金利上昇をゆるやかなものにコントロールできるかということになる。それを間違えれば、金利上昇という経済原理に沿った市場の反応も、株価暴落といった副反応を招きかねない。政策当局のオペレーションが問われる局面に差し掛かっている。(ジャーナリスト 岸井雄作)