金融市場の様子が怪しくなってきている。米国の長期金利上昇が「震源」で、日米の株価が下落するという流れが目立っている。
このままの状況が続くのか、市場も懸命に見極めようとしている。
財政が大盤振る舞いしても金利が上がりにくいワケ
今の世界経済は、いち早くプラス成長に戻った中国など一部を除き、日米欧の主要国は引き続き、新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が停滞し、成長軌道に回帰できないでいる。
各国は感染対策と経済対策で、財政赤字には目をつぶって財政出動を拡大し続けざるを得ない状況で、日本では総額100兆円を上回る2021年度予算案の年度内成立が確定。米国でも、バイデン政権肝煎りの1兆9000億ドル(約200兆円)の経済対策(米国救済計画)が下院で可決され、上院で審議が進められている。
こうした大盤振る舞いを支えているのが、各国の中央銀行の超金融緩和政策で、対策のため国債を増発しても、中央銀行が市場で買い支えるので、金利上昇が抑えられるのだ。
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ率が2%を緩やかに上回る状態が見通せるまでゼロ金利政策を続けるとして、国債買い入れによる市場への資金供給に努める。日本銀行が「異次元緩和」の一環として長期金利の上限を0.2%程度とした資金供給に加え、株価指数連動投資信託(ETF)購入という事実上の株の買い支え政策まで実施。欧州も財政支出を継続し、欧州中央銀行(ECB)が資金供給を続けている。
こうした超金融緩和で溢れかえるマネーが株式市場に流れ込み、米ダウ工業株30種平均は3万ドルを超え、日経平均株価も一時は3万円を30年ぶりに回復した。コロナ禍後の経済正常化、成長回復への期待もあるとはいえ、昨今の株価上昇はバブル的な金融相場とも指摘される。
この状況に警鐘を鳴らしたのが米国の金利だ。年明けは1%を下回り、2021年1月中は1.1%を挟んだ落ち着いた動きだったが、2月以降は新型コロナ感染者数の減少や、1.9兆ドルの経済対策をにらんでジワジワと上昇を始めた。
年明けのころは、2021年末までの上昇は1.5%程度までとの見方が多かったが、2月25日の市場で1.6%台に急上昇し、その後は1.4~1.5%台と、水準を切り上げている。日本の長期金利は2月末には一時、0.175%と5年ぶりの水準に上昇したが、米国に比べるとまだ落ち着いている。