原発は野垂れ死にする
さまざまな分野の専門家にインタビューしている。原発の限界、再生可能エネルギーへの転換を訴える点でほぼ共通している。その中で、関西電力の金品授受問題によって、「原発推進のキーマン」を失ったという橘川武郎・国際大学教授の指摘が印象に残った。橘川さんはエネルギー政策に詳しく、脱炭素のために原発は必要だという立場だ。
しかし、関電だけでなく、日本全体の原発推進のキーマンだった関電の豊松秀己・元副社長が1億円超の金品を受け取っていたことが分かり、辞任。原発のリプレース(建て替え)をリードする民間側の担い手がいなくなってしまったという。
関電の問題の影響は大きく、国はリプレースを言い出せない状況にある、と見ている。
「このままでは、原発は野垂れ死にすることになる、というのが私の見方です」
政府は2016年12月、賠償や廃炉など原発事故の対応費用が11兆円から21.5兆円に増えるとして、2020年4月から国民に広く負担させるようにした。送電線の使用量「託送料金」に新たな負担金が上乗せされた。標準家庭で月18円。全国で総額6000億円、40年間の徴収で2.4兆円になるという。これに対して取り消しを求める住民訴訟の動きもある。そもそも21.5兆円に収まらず、最大81兆円になるという民間シンクタンクの試算もあるそうだ。高くなるばかりの原発のコストを直視すべきだ、「原発が終わる」時が来た、と結んでいる。(渡辺淳悦)
「原発時代の終焉」
小森敦司著
緑風出版
1800円(税別)