大震災の8日前に津波対策の会合があった
小森さんは津波対策について、いろいろな角度から情報公開請求を行った。そうして入手した資料から防災行政当局と電力業界の「なれ合い」の関係を示唆するものが出てきたという。
原発事故直前に文科省の防災研究担当者と東京電力社員らがメールを交わしていた。東電の社員は、平安時代に東北地方を襲った貞観津波に対する国の評価に絡んで、福島の原発への影響を懸念する記述が残されていた。
3月中旬に三陸沖~房総沖の長期評価(第二版)が公表されるため、事前に内々にその内容を電力会社側に説明したいとしたうえで、こう書いている。
「なお、東北電力さんは施設の標高が高くあまり影響がないようです。原電の東海さんのほうが影響が大きいようですが いずれにしましても最も影響が大きいのは東電の模様です」
3月3日、文科省で関係者が集まり、非公開の会合が開かれた。東京電力は以下の2点を要望した。
「貞観地震の震源はまだ特定できてない、と読めるようにして頂きたい」
「貞観地震が繰り返し発生しているようにも読めるので、表現を工夫して頂きたい」
小森さんは、会合後に対策をしても間に合わなかっただろうが、東電が貞観津波の評価に神経を尖らせていたことがうかがえ、「なぜ国は対策を強く指示できなかったのだろう」と書いている。