大手商社、丸紅の株価が2021年2月25日、一時前日終値比5.8%(45円70銭)高の831円まで上昇し、昨年来高値を更新した。
米国議会で1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナ対策法案の審議が進んでいることで米国ひいては世界の景気回復期待が高まっている。これを受けて、日本市場においてもバリュー(割安)株に物色の矛先が向かうなか、PBR(株価純資産倍率)が0.8倍台の丸紅株に資金が流入した模様だ。
実力をつけて、丸紅株が見直し買い
大手商社では近年、伊藤忠商事の強さが目立つが、丸紅もじわじわと実力をつけており、見直し買いという面もある。
PBRは1株当たりのその会社の純資産に対し、株価が何倍まで買われているか、すなわち「株価÷1株当たり純資産」で求める指標。株価が資産価値に対して割高か割安かをはかる尺度で、特に1倍を下回ると割安と判断される。
PBRが1倍だとその投資の時点で会社が解散したら、理論上は株主にその投資額が戻る。もし1倍を下回っていて解散すれば、投資額以上のお金が戻る計算になるので、オトクな割安株というわけだが、あくまで理論上の話ではある。
電気自動車の米テスラのように、グイグイとグロース(成長)が期待できる銘柄と違い、成熟した会社ともいえるバリュー株は景気循環の影響を受けやすいとされる。そのため、景気回復が期待される局面では買いが集まることがあり、特に世界的な金融緩和のマネーがあふれる昨今の株式市場では物色先となりやすい。
丸紅が三菱商事を抜くことがあるかも......
一方、丸紅自体も大手商社の中で悪くないポジションにある。商社の実力をみる指標である純利益で長らく三菱商事が首位にあったが、2021年3月期はどうやら伊藤忠がトップに躍り出ることになりそうだ。
2020年4~12月期連結決算の純利益は、伊藤忠が3643億円、通期予想は4000億円。これに対して三菱商事は4~12月期が1691億円で通期予想は2000億円だ。三菱商事には得意とする原料炭価格の下落が影響している。三井物産は三菱商事を上回り、4~12月期が1989億円で通期予想が2700億円(2月3日に上方修正)。このような中で、丸紅はいまや3位の三菱商事に肉薄し、4~12月期が1637億円、通期予想は1900億円(2月3日に上方修正)だ。
丸紅が三菱商事を抜くことも、あり得ないとは言えなくなってきた。丸紅は鉄鉱石価格の上昇に加え、穀物関連事業の好調さが業績を押し上げている。
2月3日の丸紅の2020年4~12月期決算発表以降、内外の証券各社が目標株価を引き上げた。2月12日付リポートで640円から740円に引き上げた野村証券は、
「鉄鉱石や銅市況の上昇もあり、業績の堅調さは続くと考えている」
「2022年3月期には過去最高益水準に回復するだろう」
と、指摘した。
かつて「財閥系」を仰ぎ見た「関西繊維系」の丸紅が、財閥系に追いつき追い越そうとするさまが、投資家に好感されているとも言えそうだ。