「オプションB」の「3つのP」で得たこと
「でも、私は独身なので会社を辞めるわけにはいきません。コロナ禍になって思うと、結婚ってセーフティーネットだったんだなって。旦那さんがいる人は生き方のシフトチェンジもできますけど、私は一人だから自分でなんとかしないといけない。今さらながら、人生って最後まで一人で乗り切れるほど甘くないなと実感しました。もう40歳近いので、今さら言っても遅いんですけど。もっと早いうちから、人生設計をちゃんとしておけば良かったです。今までは、自分が辞めさえしなければ、会社の仕事は定年まで当たり前にあるものって信じて疑わなかったんですが、こんな状況になると、定年まで仕事がある保証なんてどこにもないですし。考えれば考えるほど、不安でたまりません」
話を聞いていると、Y衣さんは、今のつらい状況にどっぷりとはまっていて、そこ以外に目が向かなくなっているように見えます。その時、以前に読書会で取り上げた「オプションB」という本のことを思い出しました。その読書会にはY衣さんも参加していたので、こう聞いたのです。Y衣さん。「オプションB」っていう本のこと、覚えてます?
私の問いかけに、Y衣さんは小首を傾げながら、こちらを見ました。
「覚えてます。フェイスブックの女性役員の人が書いた本ですよね。あの中にあった、『3つのP』っていうのが結構印象に残ってます」
そう、私が今、Y衣さんにお伝えしたかったのが、まさにその「3つのP」なんです。Y衣さんはこの「3つのP」に、すべてを囚われてしまっているように見えたんです。
「人生設計しなかった自分が悪い」という「Personalization=自責」
「この先ずっとこの状態が続くかもと不安でしかたない」という「Permanence=永続」
「こんな社会状況のせいで、生きることすべてがつらい」という「Pervasiveness=普遍」
そう話すと、Y衣さんの表情に、少し変化が見られました。