最近、マナーに関する書籍が増えたように感じています。企業研修では必須項目として位置づけられているマナー。昭和の時代であれば、家庭内で教えられていたものが少なくありません。
しかし、家族形態の変化とともに、近年ではマナーを学ぶ機会も減ってしまいました。
「新・ビジネスの基本とマナー」(西出ひろ子)学研プラス
笑顔は口角ではなく目に宿っている
著者の西出ひろ子さんは、仕事における笑顔の重要性を次のように説きます。
「いい表情と言われて多くの人が思いつくのは、やはり笑顔です。接客業やサービス業では笑顔のトレーニングを行うこともありますが、ここで気をつけたいのは、笑顔は『つくる』ものではなく、『浮かべる』ものだということ。心が笑っていなければ、本当の意味での笑顔は浮かんでこないものです。
では、この『心』が顔のどの部分にもっとも表れるかというと、『目』なのです。『笑顔は口角を上げて表現する』と思うかもしれませんが、感情は口元よりも目に表れ、それか全体の表情をつくり出しています。とはいえ、実際には心から笑っているつもりでも、魅力的な表情を浮かべるのは意外と難しいものです」
ここで抑えておきたいのが、目元のトレーニング。どのようなトレーニングでしょうか?
西出さんは、
「鏡の前で、紙などで鼻から下を隠した状態にし、目元だけで笑顔であることが伝わるよう意識してみましよう。好きなモノや楽しいことを思い浮かべるのでもかまいません。目元が笑っていれば口角も自然と上がりますし、自分の笑顔を客観的に知ることで、魅力的な表情の感覚をつかむ練習にもなります」
と話します。
意識を相手に向けると緊張はしない
よくある悩みの一つに「緊張して笑顔ができない」というものがあります。たしかに、緊張していたら、笑顔をつくる余裕なんかありません。
西出さんは、
「意識が『自分』に向いている点が、大きな要因です。自分をよく見せようとしていたり、『失敗しないように話そう』『ちゃんとプレゼンしなければ』などと考えていたりするから、表情も硬くなってしまうのです。マナーの主語は常に『相手』です。『○○さんか求めているものを聞き出し、提供しよう』『○○さんに喜んでもらおう』と、意識を相手に向けてください」
と言います。
「『○○さん、今日は笑ってくれたら嬉しいなあ』と声に出してみるのもよいでしょう。こうした想いで相手に接していれば、あなたの表情は間違いなく魅力的なものになっているはずです。表情トレーニングは次のように練習してみましょう」
表情トレーニング(1)
最初に、鏡の前で、紙などで鼻から下を隠した状態にします。ふだんはなかなか意識しない目元の印象を客観的に捉えてみましょう。自身が思っているよりも無表情に感じるようであれば、初対面の人が同じ印象を抱いてしまう可能性があります。
表情トレーニング(2)
次に、好きなモノやシーンを想像し、目元だけで笑顔が伝わる表情を浮かべてみましょう。目が笑っていなくても口角を上げることはできますが、目が笑っていると、頬や口角も自然と上かっているはずです。これが魅力的な表情につながります。
マナーの本質を理解し実践した人たちは、上司やお客様たちに信頼される、優秀なビジネスパーソンへと成長していくと西出さんは言います。正しいマナーは、あなたの魅力を引き出し、成長への道しるべとなるはずです。(尾藤克之)