東日本大震災から10年、僧侶は人々の話を聴き続けてきた

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被災地で「幽霊」に出会うのは当然だ

   被災地は広い。避難所もあちこちに点在する。震災前の自死相談活動では、ひたすら相談者の言葉に耳を傾けた。語ることにより相談者は力を得る。こちらから出向いて「聴く」空間を作ろうと、傾聴移動喫茶「カフェ・デ・モンク」が誕生した。Monk(モンク)は英語で坊さんのこと。「お坊さんもあなたの『文句』を聴きながら、一緒に『悶苦』します」とメッセージボードに書いた。

   金田さんはその風貌から「ガンジー金田」、他のスタッフも「UFO吉田」「エリック高橋」などニックネームを付けた。「肩書を捨て、生身の自分でこの震災に向き合いたい」という思いからだった。

   南三陸町からスタートしたカフェはやがて石巻市や仙台市、登米市、福島県南相馬市など各地で開かれた。カフェでは被災地のあちこちでささやかれる「幽霊」の話題が出たという。

   仙台市で開いたカフェでは、「夕暮れ時、海外の松林の中をたくさんの人が歩いている」「津波で廃墟になった建物から誰かに見られているような気がする」などの話が出たが、実際に見たのか、噂話なのか確かめようがない。

   金田さんは、「幽霊が出るのは当然だ。みんな突然の出来事で死んでしまった」と切り出し、幽霊を怖がらず、「あなた方は残念ながら死んでいる。死んだ人には死んだ人が行くべき場所がある。そちらの世界で見守って」と語りかけてほしいと話した。この模様は同行した新聞記者によって世界に配信され、その後金田さんはイギリスのBBCやロンドンタイムスなどの取材を受けることになる。

   宗教者と医師らが協働する「心の相談室」や臨床宗教師養成講座など、金田さんがかかわったプロジェクトを紹介している。臨床宗教師とは被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で、心のケアを提供する宗教者である。東北大学大学院に「実践宗教学寄附講座」という名称で講座は設置された。

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