コロナ禍でも学生に楽しい思い出を――
そんな想いから、グランピング施設「温楽ノ森」(兵庫県豊岡市)では、今春に高校や大学を卒業する世代の学生(短大生、専門学生や大学1、2、3年生含む)の宿泊料金を無料にするキャンペーンを開始した。
運営会社のキリンジ代表、天川陽介さん(40)によれば、当初予定していた1日8組の枠は、サービス開始を発表したその日にほぼ完売。期間内でのオープン日増加を見込んでいるという。対象期間は2021年3月7日~26日の水曜、木曜、土曜を除く12日間。
「多少の損はあるかもしれないけど...」
なぜ、このようなキャンペーンを始めたのか――。会社ウォッチ編集部は3月4日、代表の天川陽介さんを取材した。
「新型コロナウイルスの影響で、授業のオンライン化や修学旅行・成人式の中止など、学生が友人同士の思い出を作る機会が著しく減っています。 そのため、どうせ空いている部屋があるなら、多少の損はあるかもしれないけど、学生が楽しめるように使おうと思いました。施設の認知を広げる意図もあります」
本来ならば1棟2万円~(定員2、3人)の宿泊費と食事代がかかるところ、キャンペーンでは宿泊費が無料に。食事代として1人5670円(税別)の注文は必須だが、通常よりお手ごろな価格でグランピングが楽しめる。
宿泊者の居住地域に制限はかけていないが、主なターゲットは関西圏の学生。実際の申し込みも、関西圏の学生が多いという。
リリース発表日の2月28日、天川さんは自身のツイッターでキャンペーンを告知。「叩かれるんじゃないかと、少し怖かったですけどね」と話す天川さんだが、投稿には好意的な反応が多く寄せられた。
「すごい良いキャンペーンだと思います」
「この春卒業する人はホントにギリギリのタイミングだけど、最後によい思い出ができるといいですね」
「学生のみんなに応援してくれる大人もちゃんといるって伝わるといいな」
このような声がツイッターで寄せられるなか、キャンペーンに対する現場スタッフのモチベーションもあがっていると、天川さんは話している。
もともと「温楽ノ森」はファミリー層を主なターゲットとしており、学生向けのキャンペーンは実施していなかった。しかし今回のキャンペーンで学生への認知が広がったため、夏が来る前に学生もしくは25歳以下など、若年層向けエリアの追加を考えている。
「温楽ノ森はファミリーコンセプトなので、今の学生たちがいずれ家族を持つときに帰ってくる施設になればいいなと思っています」(天川さん)
と、天川さん。
「温楽ノ森」は2020年7月にオープン。併設する温泉施設内では換気や消毒を行い、天川さんは「感染症対策には最大限気を付けている」と話す。感染した際の重症化リスクが高いことなどから、キャンペーン中の宿泊者は60歳未満に限定している。
今後「温楽ノ森」では、医療関係者にも同様のキャンペーンを実施する予定。