「私は仕事が生きがいだった。ありがとう。バイバイ」
今後のスズキの課題は、スバルやマツダを含む広義のトヨタグループの中で、競合するダイハツと、どう棲み分けを図るのかということだろう。将来的にはトヨタ陣営の中でスズキとダイハツが統合し、軽と小型車部門の開発・生産を一元化することも考えられる。しかし、そうなると日本の軽市場はスズキ・ダイハツ連合の寡占状態になってしまう。
鈴木氏は2015年に長男の鈴木俊宏氏に社長ポストを譲り、本人は会長兼最高経営責任者(CEO)となった。しかし、カリスマ経営者だった修氏と比べると、俊宏氏の存在感が薄いことも今後の不安要素だろう。脱炭素化に向けた電動化や自動運転など、自動車業界は克服すべき多くの課題を抱えている。
鈴木修氏は会長引退会見の最後、「私は仕事が生きがいだった。みなさんも仕事を続けてください。ありがとう。バイバイ」と手を振って、オンライン会見を後にした。
トヨタグループの中でどんなポジションを担うのか。長男の宏氏はどんなリーダーシップを発揮するのか。カリスマ経営者が去った後、「集団指導制」への移行もささやかれるスズキの真価が問われる。(ジャーナリスト 岸井勇作)