スズキの鈴木修会長が引退へ 最後は「ありがとう。バイバイ」 「中小企業のおやじ」「忙しくて死ぬ暇もない」名言残し

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「常識」を覆し、商売敵のトヨタと組んだ驚き

   とはいえ、鈴木氏率いるスズキはこの間、すべて順風満帆だったわけではない。当初、スズキは米GMグループだったが、GMは2006年、スズキへの出資比率を従来の20%から3%に引き下げ、2008年に資本提携を解消した。GMの経営不振が原因だった。

   そこでスズキは2009年、独VW(フォルクスワーゲン)と包括提携で合意するが、経営の独立性をめぐって激しく対立。スズキから見ると、VWとの提携は対等でなく、乗っ取りに近かった。このため鈴木氏は提携解消を目指したが、VW側と折り合わず、2015年、国際仲裁裁判所(ロンドン)の決定によりようやく解消(VW出資分の買戻し)に漕ぎ着けた。

   しかし、VWとの間には、こんなエピソードが残っている。資本提携に向け浜松市を訪れたVWのエンジニアたちがスズキの竜洋テストコースでスズキ車に試乗したところ、その完成度の高さに驚いたという。VWはスズキの技術力を高く評価したからこそ、支配力を強めようとしたのだった。

   その後、鈴木氏は2019年にトヨタ自動車と資本提携で合意する。これは鈴木氏が経営トップを務めた40余年間で最大の功績であり、後世への遺産となるのではないか。VWとの包括提携を破棄した後、スズキは孤立状態だったが、結果的にトヨタと組むことで落ち着いた。

   トヨタはスズキの最大のライバルであるダイハツを完全子会社として抱えており、商売敵のスズキと資本提携するメリットはほとんどないはずだった。敢えていえば、スズキがインドに生産拠点を設け、シェア1位を保持していることぐらいだろう。

   それゆえにトヨタがスズキと組むことなど、自動車業界ではありえないと思われたが、鈴木氏はそんな「常識」を見事に覆した。トヨタの豊田章男社長との個人的な人脈で実現したのは間違いない。

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