新型コロナウイルスの感染拡大にともない首都圏4都県に発令されている緊急事態宣言について、菅義偉首相は2021年3月4日、「2週間程度延長する」という考えを示した。正式には3月5日の政府対策会議で決まる予定だ。
首都圏4都県の感染者の減少が下げ止まり状態で、医療体制がひっ迫しているとの理由だが、主要メディアの多くが「菅首相と小池百合子都知事との暗闘」を背景にあげている。
そんな理由で緊急事態宣言がさらに延長されては、営業時間の短縮を要請されている飲食業界はたまったものではないが、むしろ延長を喜んでいる声も一部にあるという。いったいどういうことか? 主要メディアの報道とネットの声をみると――。
「協力金バブル」で宣言の継続を望む小さな飲食店
緊急事態宣言がさらに2週間延長となると、「時短要請」を迫られる飲食業界は苦境に立たされる。読売新聞(3月4日付)「来客1日5~6人、飲食店『なんとか2週間で収まって』... 緊急事態延長」は、飲食店の経営者の話を聞いている。
JR新橋駅前の焼き鳥店「鳥仙」の男性店長(67)は、都の要請に応じて20時に閉店している。来客は1日5~6人程度で、売り上げは感染拡大前の約3割に減った。宣言が解除されれば、閉店時間を23時に戻すつもりだったが、先延ばしとなりそうな状況を「仕方ない。創業55年で一番苦しい状況」と、嘆いた。
東京都目黒区の目黒川沿いにあるイタリアンレストラン「バッチョーネ」は毎年3月20日頃から花見客でにぎわう。小島史朗社長は「なんとかこの2週間で宣言が解除されることを期待したい」と祈るように話した。
一方で「協力金バブル」のホンネを明かす飲食店。さいたま市見沼区の居酒屋の男性店長は「うちのような小さな店では1日6万円の協力金の支給はありがたい。(宣言を)延長してくれてむしろ助かる」と打ち明けた。
毎日新聞(3月4日付)「飲食店『限界近い』期待の花見、暗い影」も飲食店の声を聞いている。
例年300万人以上が訪れる都内の桜の名所・目黒川。カフェバー「クー・エ・クー」店長・下山純子さんは「花見シーズンが去年と同じように落ち込むかもしれない。今は協力金で食いつないでいる。宣言の延長期間が長引けば厳しい」とうつむいた。
東京・上野の繁華街の居酒屋の女性店長は「午後4時からの3時間で客は3人だけ。常連客の足は遠のいているのに、宣言の延長でさらに客が減ってしまう」と嘆いた。