「コスト構造」を理解すべき
著者は、こうしたコスト構造の現状を指摘したうえで、こう述べる。
「『支出・支払い』とは、企業活動の手段であり目的ではありません。真の目的は、資産を活用し価値を生み出すこと。コスト構造は、生み出す価値をベースに考えねばならないのです。不確実で計画どおりに事が進まない危機的状況のいま、すでに保有している資産、これから保有しようとする資産をどのように活用できるか、活用の仕方をコントロールすることこそ、コスト構造を変革するための大きなポイントになります」
本書では、コスト構造について「転用できない固定費を減らす」、「減らせない固定費はより価値の高いところで使う」などのシナリオを使って変革することを提唱。マップを使って具体的な方法を示している。
著者によると、コンサルティング会社におけるクライアントへの提供価値が近年変化しているという。以前は、外部環境、内部環境を俯瞰してファクトを収集・分析して、企業の戦略や方向性を指し示すことができれば、クライアントは価値を感じたものだが、現在では、戦略が企業の実際の仕組みに落とし込まれ、実行に移され、成果や効果につながって初めて価値を感じてもらえるようになった。つまり、「ビジネスパートナー」としての提供価値が求められているという。
そうしたことから、本書の内容は、「コスト構造」でも「人材」「意思決定」についても、相対的にどんな企業にもコレが合いそう―というような「理論」を示したものではなく、成功したモデルを基に述べられているようで具体的だ。経営者や、起業を目指す人には目を通す価値がありそうだ。
「オペレーション トランスフォーメーション ニューノーマル 「変革」する経営戦略」
高砂哲男著
日本実業出版社
2000円(税別)