危険な少子化 コロナ禍の影響は2021年が本番だ!(鷲尾香一)

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   少子化が危機的な状況に陥っている。2021年2月22日に厚生労働省が発表した人口動態統計速報によると、2020年の出生者数は87万2683人と前年比2.9%の減少となった。

   さらに深刻なのは2021年以降で、予想を超えるスピードで少子化が進む可能性が高まっていることだ。

  • コロナ禍で、どうなる少子化……(写真はイメージ)
    コロナ禍で、どうなる少子化……(写真はイメージ)
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出生数の減少が加速している

   これまでの出生数の推移を見ると、2016年に年間の出生数が100万人を割り込み、その後も出生数の減少が加速している=表1参照

   当然だが、少子化が続いているということは、出産適齢期を迎える女性の数も減るのだから、出生率が上昇しない以上、出生数の減少に歯止めはかからない。2016年に年間出生数が100万人を割り込んでからは、出生数の減少ペースが加速している。

   2020年の出生数の減少について、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響」と解説しているメディアがあるが、これは明らかに間違いだ。妊娠から出産までには、おおよそ1年かかるわけだから、2020年の出生数は新型コロナウイルスの影響を、ほとんど受けていない。したがって、もっとも懸念されるのは、2021年以降、新型コロナウイルスが出生数にどのような影響を与えるのか、という点だろう。

   結論から言えば、かなりの影響が見込まれる。一般的には、結婚 → 妊娠 → 出産という行程をたどると考えれば、新型コロナウイルスの影響が出生数に表れるのは、21年以降となる。

   では、まずは2020年の婚姻数はどうだったのか――。

   20年の婚姻数は53万7583組と、前年比12.7%も減少した。少子化の影響により結婚適齢期の人口も減少しているため、婚姻数も減少の一途をたどっている。さらに、近年では生涯独身者数も増加している。それでも、20年の婚姻数減少は明らかにコロナ禍が影響している=表2参照

   これは、月別婚姻数の推移を見ると明らかだ。20年2月には19年を上回っていた婚姻数は、5月には19年の3分の1に減少した。これは政府の緊急事態宣言が発出されたことの影響といえる。

   その後も、10月こそわずかに19年を上回るが、総数では19年を大きく下回る結果となった=表3参照

コロナ禍で相次いだ結婚式の延期

   緊急事態宣言により、不要不急の外出自粛、大人数での飲食の自粛などにより、結婚式を延期する人が相次いだ。

   これは、結婚式場の取り扱い件数に現れている。4月の件数は568件と前年比92.1%も減少。5月は220件で97.3%減、6月は622件で98.0%も減少している=表4参照

   おそらく、結婚式を延期したことで入籍も延期しているのだろう。それが、婚姻数の大幅な減少に影響しているものと思われる。

   今は結婚したら、すぐに子どもを作るという時代ではないのかもしれない。新婚生活を楽しむ人たちも多いだろう。そこで、2021年の出生数に直接影響がある妊娠届け出数を見てみよう=表5参照

   月別の妊娠届出数を見ると、20年4月以降は19年を下回って推移している。残念ながら20年の統計が10月までしか発表されていないため、総数を比較することはできない。

   ただ、7月までの総数は19年が76万6801件、20年が72万9267件なので、この時点で3万7534件も少ない。19年の総数は91万7681件だったの20年が19年並みになるには、2か月で18万8414件の届出が必要だ。1か月当たり、約9万4000件。これだけでも、2021年の出生数が大幅な減少になることが予想できる。

   これらの数字から、おそらく2020年の出生数は83万人程度まで減少すると予想される。

   急激に少子化が進行する可能性に直面している今、政府は雇用の安定を図り、個人の経済的不安を取り除くとともに、新型コロナウイルスのワクチン接種を急ぎ、安全で安定した生活が営める環境づくりに全力を集中すべきだ。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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