サラ金の背後にいた銀行は......
70年代に融資先の確保に苦しみ、サラ金向け融資に力を入れたのが信託銀行や日本長期信用銀行(現・新生銀行)などだった。豊富な資金を背景にサラ金各社は女性向け商品を開発。女性客を取り込むため駅前でのティッシュ配りはこの頃盛んに行われた。
サラ金各社は競って審査基準を緩和した。貸し倒れを少なくするため、信用情報の共有化が始まった。不良債務者のブラック情報を共有する業界団体、日本消費者金融協会(JCFA)がつくられ、現在の日本信用情報機構(JICC)につながっている。
本書の後半は、サラ金が社会問題化し、さまざまな立法が行われていった過程を描いている。
2006年の改正貸金業法が成立した当時の自民党の内情がおもしろい。小泉政権下、政治献金を受け取っている議員らから規制に手心を加えようという動きもあったが、業界の既得権益を守る「抵抗勢力」と見られることを恐れ、金利引き下げに反対しにくい雰囲気になったという。
そして今、主要なサラ金各社はメガバンクを中心とする銀行の傘下に入り、小口信用貸付の主流は銀行のカードローンへと移りつつある。たとえ、サラ金を利用していなくても、銀行に預金している我々自身が、「究極的にはサラ金の金主だった」と小島さんは書いている。
サラ金の問題を他人事ではなく「自分事」として認識することで、将来のあるべき金融や経済のあり方を議論してほしい、と終章を結んでいる。
それにしても、1987年当時、レイクが金利を36%に引き下げて業界最低を更新した、という記述には驚いた。現在、クレジットカードのキャッシングの金利は約18%が主流だ。いかに高利だったかを改めて痛感した。
2006年の改正貸金業法が成立した当時、サラ金の借入残高がある人は約1400万人、一度でも利用したことのある人は約2000万人もいた、とある。語らずとも多くの人がサラ金の消長を複雑な思いでかみしめているに違いない。
「サラ金の歴史 消費者金融と日本社会」
小島庸平著
中央公論新社
980円(税別)