生徒の4人に1人が先生と週0~1回しか接していない
一方で、新たに実行してきた措置の中には、緩和の流れも。まずは、学校で対面授業が段階的に再開し、保育所も再開することに。理髪店や美容室も3月1日より営業を再開。加えて、人口10万人あたり過去7日間の新規感染者数が安定して「35人」以下となる場合は、各州でさらなる緩和措置が実施されることになり、小売業や博物館、美術館、マッサージなどのサービス業の再開が可能となります(文化施設やスポーツ施設、飲食店、宿泊施設の再開については未定)。
何よりもまず、先行して学校現場での制限緩和に踏み切った背景には、ホームスクーリングの増加で、以前より問題視されていた教育格差がさらに拡大していることが挙げられます。
前述のニュース番組「tagesschau」では、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の保護者会が保護者2万2000人を対象に行った調査で、ホームスクーリングでの学習環境が学校によって大きく異なることが報じています。
ドイツの場合、日本の小学校にあたる「基礎学校」で4年間学んだ後は、進路によって選択する学校の種類が分かれます。主に、職業訓練へ進むための「基幹学校」、職業専門学校への進学を目指す「実科学校」、そして大学進学希望者が進む「ギムナジウム」の3つが挙げられます。
現在は、大学進学を希望する生徒が増えたことにより、基幹学校や実科学校は、成績が悪い生徒や移民など社会的に困難な背景を持つ子どもが通う学校とされ、教育の格差が大きく取り沙汰されています。
今回の調査では、ギムナジウムでは60%の生徒がタブレットのようなデジタル機器を利用しているのに対して、基幹学校や実科学校では30%しか利用していないという結果になりました。また、すべての学校で約4人に1人の生徒が、先生と週に1回、もしくはまったく接触していないという結果も出ています。
「家では先生から送られてきた動画を視て、課題をこなすだけで、本当に理解しているのか不安」、「ホームスクーリングで子供同士の交流がないので、精神的な影響がないか心配」など、州内の学校に子供を通わせている友人からはこんな声が聞こえてきます。
NRW州では2月22日から、小学校などで対面授業を段階的に再開することとなりましたが、現場では授業の遅れをどう取り戻すかなど問題は山積み。制限が解除されたらすべて「元どおり」ではなく、そこから新たな課題に向き合わなければなりません。
そして、おそらくこれは、教育分野のみならず、社会全体に言えることなのでしょう。(神木桃子)