「一寸の虫にも五分の魂!」とはこのことを言うのだろうか――。
格安スマホ「IIJmio」を展開する通信大手インターネットイニシアティブ(IIJ)が2021年2月24日、携帯大手3社の「横並び」料金に真っ向勝負を挑む新料金プランを発表した。
20GB(ギガバイト)で月額1880円(税別)と、1100円安い料金を打ち出した。
ネット上では「応援コール」が起こっている。
あえて大手3社「横並び」に勝負を挑むプラン
IIJの公式サイトによると、新料金に名前は「ギガプラン」で、提供は4月1日から。新プラン目玉の20GBで月額1880円(税別、以下同)のほか、次のようにデータ利用量に応じた段階的な料金設定にした=下の価格表を参照。
▽15GB:1680円。
▽8GB:1380円
▽4GB:980円。
▽2GB:780円。
さらに、3分以内の通話がかけ放題になる月額600円、10分以内の通話で月額830円のオプションも加えた。6月からは家族間など同一契約内でデータ容量のシェアができるようにし、5Gにも対応する。
また、申し込みはオンラインでだけでなく、従来どおりビックカメラやソフマップ、コジマ、ヨドバシカメラの家電量販店での申し込みも可能にした。これは大手3社の新プランが、いずれもオンラインのみの受付に限定していることに対し、サービス面でも対抗した。
IIJでは、これまで最も容量が大きい既存プランは「12GBで3260円」だったから、あえて大手3社と勝負するために「20GB」を出したことになる。「20GBで1880円」は、単純に計算すると、容量を6割増やし、4割の値下げを断行した形だ。
これは、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が「5分以内のかけ放題」を含んで20GBで月額2980円の新プランを掲げて春の商戦に殴り込んできたことに対して、迎え撃つ構えを示したわけだ。
かつて月額2000円台は、格安スマホの独壇場だっただけに、同社の矢吹重雄執行役員は発表記者会見で危機感を露わにした。
「春商戦を意識して、積極的な価格設定にしました。大手のプランが低価格化し、非常に競争環境が厳しくなって、苦戦を強いられています。新プランにより再び活性化させ、事業を拡大したい」
と強調したのだった。
読売新聞(2月25日付)「格安スマホ大手に対抗 新料金プラン続々」によると、格安スマホ業界は追い込まれているという。
「営業利益が売上高に占める割合(営業利益率)は、大手3社は20%程度だが、格安業者は数%にとどまるとされる。値下げは格安業者の経営をもろに圧迫する。こうした状況を受け、政府は格安業者が大手からデータ通信の回線を借りる際のレンタル料(接続料)の値下げを加速させる考えだ。格安業者も競争できる健全な市場育成に目配りする必要がある」
総務省は2020年10月、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を発表。こうした「接続料」を3年間で5割減にするという目標を掲げた。ところが、格安スマホ会社の団体は今年1月、
「3年間も待っていては、みんなつぶれてしまう。大手の廉価プランに対抗できるように、『3年間で5割減』を前倒ししてほしい」
と総務省に要望書を出しているが、まだ具体的に進んでいない状態だ。
「ドコモに乗り換えようと思ったが、やっぱり応援する」
今回の「IIJmio」の新料金プランについて、ネット上ではエールの声が起こっている。
フリーランスジャーナリストの山口健太氏は、こう説明した。
「コロナ禍の中、個人向けのIIJmioは苦戦しており、回線数は2019年末の107.3万回線から2020年末には103.7万回線に減少。大手3社の新料金プラン発表が追い打ちをかける形になりました。巻き返しを図る新プランは、2GB 780円、4GB 980円と、格安業者の中でも最安レベル。複数端末でSIMを契約して容量をシェアするなど、工夫次第で使い道が広がりそうです。昼休み時間帯などに速度が落ちやすい点は注意が必要ですが、大手のサブブランドがカバーしていない価格帯や機能が魅力といえます」
ITジャーナリストの篠原修司氏もこう指摘した。
「IIJmioの新料金プランはeSIM(組み込み式のSIMカード)であれば2GBで月400円という安さが魅力です。これに楽天モバイルのRakuten UN-LIMIT VIを物理SIMで組み合わせると、月400円で通話かけ放題のスマホが持てることになります。仮に4GBまで増やしたとしても600円ですむため、毎月の携帯料金を安く抑えたい人にとってはうれしいプラン構成です。また、データ超過後の低速モード時の速度も、これまでの200kbpsから300kbpsに増えました。このため制限後もいままでより快適になるものと思われます(とはいえ欲を言えば1Mbpsは欲しいものですが)」
また、もともとのユーザーからもこんな称賛の声が多かった。
「スマホをほとんど使わない方、または少ししか使わない方ならIIJmioの2GB、4GBはなかなか魅力的なプランだと思います。20GB使う層だとスマホをかなり使う人なので、少し高くてもUQモバイルやY!mobileを使ったほうがストレスはなくていいと思います。今回の大手3社の新料金プランのおかげで、格安会社も料金が安く、しかも使い勝手の良い新プランが出て、選びやすくなったのはとても良いことだと思います」
「6年ほどIIJを使っています。家族プランで、スマホ5台で毎月8000円ほど。自宅ではWi-Fiで、子どもたちには外での動画やオンラインゲームは控えてもらうなど、多少気をつけていますが、苦にはならない範囲です。各社安いプランを出してきたから、IIJ どうなっちゃうかなーと心配していましたが、新料金出しましたね。なんとか踏ん張ってほしいです!」
「初めてのスマホはIIJのミニマムスタートプラン、高速通信が別売りクーポンでした。知らないうちに月500MB分が無料でつくようになり、あれよ、あれよと3GBまで増えました(プラン変更なしで)。その気前の良さと親切さに感動してIIJのファンになりました。しかし、繋がりにくさに不満が出て、今は大手のサブブランドです。最近タブレットにもSIMを入れてみたくなり、魅力的なプランを打ち出してきたIIJをまた使いたくなりました。がんばれIIJ!」
「もう5年IIJ。あまり携帯を使わない自分には便利だった。しかしドコモのahamoを見て乗り換えようかと考えていたけど、これなら4GBで十分なので使い続ける事にする。格安陣営も何とか頑張って欲しいですね」
「横並びでなくプランに個性を出してくるのは良い傾向」
「やっぱり4GBあれば足りるよねえ。家族3人でファミリーシェアプラン12GBでさえ持て余していた。ウチは4+2+2にして容量をシェアするつもり。月内の容量足しも、コース変更もカンタンにできるみたいだし」
「ホントIIJ は昼休みが遅い、キャリアの格安プランに変えようと思っていたところ。ただ今は在宅でほとんど使わんし、2GBが格安なのはうれしい。もうしばらくIIJ 続けよう。うまいプランだわ」
一方で、大手の回線を借りている現状から、データ使用量が多い昼休みの時間帯などに速度が落ちるなど、不満の声があるのも確かだ。
「IIJは朝と昼の速度が落ちるので、この差をどう見るかだな。私は基本12時~13時しか使わないので、全く速度が出ずにYahoo見るだけでも数十秒かかったので結局キャリアに戻した。大手と価格差がほぼないから、せめて速度保証があるプランのほうが良かった」
「IIJ 使っていたけどお昼がまったく使い物にならなくて止めた。大手が値下げしたから、今までの安かろう悪かろうは厳しいと思う」
今回の新プラン発表によって、さらなる値下げの動きが活発化する期待が高まっている。
「横並びでなくプランに個性を出してくるのは良い傾向ではないでしょうか」
「ahamo・UQ・LINEMOなどによる大容量プランの値下げ競争だけが過熱している昨今、小容量プランで1000円を切る商品が出るのは魅力的。私の家ではネット回線を引いているので、SIMのデータ容量は少なくて十分。他の事業者も巻き込んで小容量の価格競争が加速して欲しい」
「格安スマホの各社の新プラン、やはり月20GB未満まででの楽天との棲み分けを狙った料金構成が多いですね。1GB~20GBは格安スマホ、1GB未満は楽天が最安(0円)となると、大手3社のもう一段の対抗もあるのかしら?」
(福田和郎)