2020年の家電小売り市場の規模は、前年から増えた一方、IT・オフィス市場が消費増税前の駆け込み需要やウィンドウズ7のサポート終了に伴う特需があった前年より、金額規模で下回ったことがわかった。マーケティングリサーチのGfKジャパンが2021年2月19日に発表した。
パソコンの販売台数は減少したが20年はタブレット端末が大幅に伸び、両方を合わせた市場は前年比5%増。全体の半数以上をタブレットが占めるようになった。
掃除機、スティックタイプが初の50%
2020年の家電小売市場の規模は、前年比2.9%増の7兆2800億円。コロナ禍に見舞われた1年だったが、それに伴う需要も発生し結果的に前年を上回った。家電製品の小売りでも年々、インターネット販売の割合が増えているが、20年は外出自粛が追い風になって、販売金額で20%を超える伸び。家電小売市場におけるインターネット販売が占める金額構成比は前年から3ポイント増え19%になった。
GfKジャパンによると、生活家電市場では、特別定額給付金の支給が比較的高価格な大型生活家電の買い替えを促進させたほか、外出自粛による巣ごもり需要の拡大などが小型生活家電の販売を押し上げた。
冷蔵庫は前年並みの460万台。3、4月は最初の緊急事態宣言の発出などで販売は落ち込んだが、夏は気温が平年を上回るなど暑さに見舞われ、買い替えが進んだとみられる。特別定額給付金がより性能の高い機種への買い替えを促したとみえ、中容量(201~400リットル)が24%増と、前年から2%ポイント拡大した。
エアコンは前年比1%増の930万台。緊急事態宣言が発出された4月の販売は大幅に減少したが、5月と6月は全国的に気温が平年を大きく上回り需要が拡大した。掃除機は前年並みの810万台。スティックタイプが数量で前年比6%増、ロボットタイプが4%増と引き続き拡大した一方で、キャニスタータイプは10%減、ハンディタイプは14%減となった。キャニスタータイプからスティックタイプへの需要シフトが継続しており、掃除機全体に占めるスティックタイプの数量構成比は前年から3ポイント拡大し50%と初めて半数を占めた。
パソコン、前年特需の反動で8%減
2020年のIT・オフィス市場は、 テレワークやオンライン授業、政府主導のGIGAスクール構想による需要拡大があったものの、前年より金額規模は下回った。パソコン(PC)は、1700万台で前年比8%減だったが、18年以前と比べると高い販売水準=下グラフ参照。
リテール市場は同12%増の360万台と2年連続のプラス成長となった。テレワークやオンライン授業による需要の高まりなどが市場を支えた。ディーラーらによるリセラー(再販)市場は同6%減の930万台。リプレイス需要のピークとなった前年から縮小したものの、GIGAスクール構想の計画前倒しによって秋から販売が急伸した。
タブレット端末は前年比39%増の990万台。リセラー市場は教育関連での需要が追い風となり同214%増となったが、リテール市場は同8%減だった。通信方式別では、キャリア回線付きは同39%減と大きく減少したが、縮小が続いていたSIMフリーモデルは同1%増、Wi-Fiモデルは同28%増と伸長した=下グラフ参照。
その結果、それぞれのシェアは、キャリア回線付きが前年から18%ポイント縮小の34%、SIMフリーモデルは3%。Wi-Fiモデルが17%ポイント拡大の63%で最多となった。
PCとタブレット端末と合わせてみると、市場は前年比5%増の2690万台となった。パソコンが前年から24%減少したものの、タブレットは教育関連の拡大が販売を押し上げ、前年比66%増と急伸した。全体に占めるタブレットの割合は、前年から19%ポイント拡大の51%と半数以上を占めた。