緊急事態宣言が2021年2月7日に延長されてから2週間。新型コロナウイルスの新規感染者数はかなり減ってきたが、ここにきて減少傾向に「下げ止まり」がみられるという。
そもそも、この急速な減少傾向、
「東京五輪を見越して検査数を減らしているためでは」
と、疑問視する人も多い。
いったいどうなっているのか。はたして、緊急事態宣言は予定どおり解除できるのだろうか――。
驚愕の事実、保健所はしっかり調査していなかった
それでは、積極的疫学調査の縮小による影響がみられないのはなぜか――。東京新聞は、驚くべき結論を導いている。東京都が1月22日に「追跡調査の縮小通知」を出す以前から保健所の機能は崩壊に陥っており、しっかりした追跡調査ができる状態ではなかった。都の「追跡調査の縮小通知」は保健所の現状を追認しただけで、通知の前後に調査内容が変わることなどなかったというのだ。
東京新聞はこう伝える。
「そもそも通知の前後で、保健所の調査方法に大きな変化はないとの声がある。複数の保健所によると、2020年12月ごろからの感染者増で、事実上追い切れないケースが続出。ある保健所の所長は『前から濃淡は付けている。通知によって変わったことはない。保健所によってはすでに全然やっていなかったようだ』と説明。都の職員も『通知は実態に合わせた面がある』と明かす」
もちろん、しっかり調査していた保健所もあった。
「墨田区保健所は、通知後も陽性者1人ずつに詳しい調査を継続。それでも陽性者は都内全域と同じように減少しているといい、西塚至所長は『流行は抑えられているのは明らか』とみる。本来は徹底的に追跡調査をするのに越したことはない。だが大曲医師は『保健所業務の負荷を考えると、全体的な減少傾向が続いている限りは重点化でいい。封じ込めの可能性が見えた段階で幅広い調査に戻すべきだ』と指摘している」
さて、この減少傾向の下げ止まりをどうみるか。ネットでは「国民の間の気の緩みが大きい」という意見が圧倒的多数を占めている。ヤフーニュース「みんなの意見」で「危機意識が緩む『コロナ慣れ』、感じますか?」と聞いたところ、2月22日11時現在(投票数20万4140票)で、「感じる」(75.6%)、「やや感じる」(15%)、「あまり感じない」(3.6%)、「感じない」(5%)という結果になった。「コロナ慣れを感じる」人が90.6%と9割を超えたのだ。
コロナ感染者を出したのに「濃厚接触者なしです」
ネット上では、こんな意見があふれている。
エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏は、こう指摘した。
「今回の緊急事態宣言は、経済への影響を最小限に抑えるために、飲食店の時短営業が中心の限定的なものになった。これでは、新規感染者数は一定レベルまでは減っても、それ以上は減りづらくなるのは当然だ。感染を完全に封じ込めることができずに、緊急事態宣言期間がいたずらに長びくことになり、結局経済へのダメージが蓄積されていく。1月に緊急事態宣言を再発令する際、ロックダウン(都市封鎖)に近い厳格なものにしていれば、アナウンスメント効果も大きくなり、短期間で新規感染者数をゼロ近くまで減らすことができていた可能性が高い。そこから感染状況を見ながら徐々に宣言の内容を緩和していく政策のほうが、結果として経済へのダメージは小さいもので済んだのではないか」
緊急事態宣言など、あってなきが如しの状態だったという人も多い。
「電車もバスも都内では、もはや今までどおりの混み具合だし、ランチタイムも普通に人がいっぱいいるし、うちの近所の上野、御徒町、アメ横あたりでは時短宣言なんてそっちのけで多くの飲み屋がやっているよ」
やはり「検査方法」に疑問を投げかける人が非常に多かった。保健所がちゃんと調査しないという具体的ケースのオンパレードである。
「私はオペレーターの仕事をしています。ついにコロナ感染者が出てしまいました。けど、保健所から『濃厚接触者はいません。会社規模でのPCR検査は熱があり息苦しさのある人のみで他は必要なし。(となりの席の人も)するなら自費で』との回答。そのあと数名が熱を出し休んでも表面的には胃腸炎。感染者を増やさないために数をコントロールするために検査させないのでしょうか」
「年末、子供の保育園の職員さんがコロナになりました。事務の人だったので、同じ事務の職員さん5人がPCR,その後、発熱者がポロポロ出始め、保育士を含め職員全員検査になりました。その後、保育士で陽性者が出たため(推測)園児も全員検査しました。合計200人くらい。結果陽性者は園児が1名、職員が15名でした。保健所の濃厚接種の指定より、感染が広まっていたようです。全員検査になってよかったです。そのまま開園していたら(事務職のみの検査で終わっていたら)園児にもっと広まっていたかも」
「私の会社の高齢の経営者が感染して未だに退院できない。それでも保健所は濃厚接触者なしだから何もしないでよいとの事。外と接触が多い仕事なので、強制的に検査費会社もちで定期的に検査をやっているけど、そこまでやらない所がほとんどでは。経済を早く復活させたい、感染を抑え込みたいのなら、海外のように積極的な検査をして抑え込むべきではないだろうか」
「うちの会社もそうでした。感染者本人から申告があった日から逆算し、土日を跨(また)いでだから濃厚接触に該当する者はなしとか、不安なら自費で各自検査を受けて下さいなど...わけ解らない説明がありました。要は表向きの数だけ気にした検査なのかなと改めて思いましたね」
何でも東京五輪のせいにするのは一種の陰謀論だ
「区立保育園に勤務しているが、園児に陽性が出ても濃厚接触者がいないように発表している。具体的には、陽性と分かった2日前に接触した人が濃厚接触者だという規定があるそうで、だから検査日を遅らせて、検査結果が出るまでは欠席してもらい、検査結果が出た時には陽性でも2日前には欠席していたから濃厚接触者はいないと公表する仕組み。母親が発症して陽性だったのに家族は検査をしないという例もあった。園としても目が点...。なんとか人数を減らすために検査数を減らしているとしか思えない。だいたい、飲食店の時短営業だけで2000人超えが300人にまで減るわけがない。それで減っていれば、諸外国もこんな事態になっていないよ」
「妹の会社で隣のオッサンが感染し、家族全員陽性だったらしいが、会社ではマスク着用があったので、濃厚接触者なしで検査を受けられなかったと言っていました」
「自分の会社でも、最大で合計40分ほどの接触があったと陽性者から申告を受けた方々が、直後の聞き取りで1回が長くて約10分で、数回に分けて合計40分のケースを含めて、マスクをしていたから『濃厚接触者ではないから検査不要、自宅待機も不要』となった人が数名います。念のために検査を受けて全員が陰性でしたが。1か月以上経っていますが、一人も体の異変を訴える人はいません。陽性となった人はマスクをしていましたが、普段から口数が多い人なので飛沫は相当あったとは思いますが、結果的には保健所の判断は正しいと言えるかもしれません。あくまでも結果論ですが」
一方で、確かに感染者は減ってきているはずという声も多かった。
「東京で1日の感染者が2000人いた頃から300人ほどになり、1700人減ったわけです。感染減少ペースが少しずつ下がってくるのは、分母が違うのだから、数学上当たり前の話だ。体重120キロの人が20キロ減らすのと、体重70キロの人が20キロ減らすのとでは、同じ食生活・運動量ならそれにかかる期間が全然違うのと同じです。それと、何でもオリンピックのせいにするのは、一種の陰謀論だと思います」
「もし検査を絞っているのが減少傾向の原因なら、陽性率が増えるのが必然ですが、そうなっていないので感染は減っていると判断できます。多い状態から減るのが早くて、一定数減ったら減り方が鈍化するのは当然です。割合を考えればわかる事です。ただの算数です」
「若い世代が緩んできていると批判する人が多いですが、若い人のほうが、いつまでも自粛しても意味がない、コロナとは共存していくしかない、ということに気づいてきたのだと思います」
(福田和郎)