保健所の負担減のため「積極的疫学調査」を縮小
「積極的な検査」と言えば、東京都モニタリング会議の猪口正孝・都医師会副会長も「戦略的な検査」が必要だと言及していた。じつは東京都は1月22日、第3波の猛威によって医療体制の逼迫化したことに伴い、保健所の負担を減らすために感染経路を追跡する「積極的疫学調査」を縮小・簡略化した。対象者を高齢者など重症化リスクのある感染者に絞ったのだ。
具体的には、調査対象を高齢者など重症化リスクのある感染者に絞り、医療機関や高齢者施設の関係者に限定したのだ。それまでは感染者の家族まで「濃厚接触者」として検査していたのに対象外とした。そして、誰が濃厚接触者に当たるかの判断は感染者本人や企業、学校などに任せることにした。ちょうど、新規感染者が急速に減少傾向に転じた時期と重なったため、インターネットなどでは、
「東京五輪を前に、コロナが収束しつつあるというと印象を与えるためでは」
という批判の声が根強くある。
これは本当なのだろうか――。東京新聞が2月7日付の「東京の感染者急減は『積極的疫学調査』が減ったから?」が、この「都市伝説」のような疑問に迫っている。
「東京都の新規感染者数が大きく減ったのは、感染経路や濃厚接触者を追跡して調べる『積極的疫学調査』の規模を縮小したからでは? インターネット上などで疑問が上がっている。現状を追った。保健所の業務逼迫を受け、都が追跡調査の対象をリスクの高い人や集団感染の恐れがあるケースに重点化するよう通知したのは1月22日。連日1200人以上だった都内の新規感染者数は直後から1000人を割り込み、(10日後の)2月1日には2か月ぶりに400人を下回るなど減少傾向が続いている。追跡調査を縮小したため、これまで追えていた軽症者や無症状者を見逃しているのでは...。疑問は主にこうした見方に基づいている」
東京新聞の取材に、「データを見る限りそれはない」と、都のモニタリング会議メンバーを務める国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は否定したのだった。
「根拠の一つは、感染経路不明者の割合だ。追跡調査を縮小すれば、全体の感染者に占める不明者の割合は上がるはず。縮小通知の前後で不明者の割合は62.9%から51.3%とむしろ減少している(2月5日現在)。もう一点は、無症状者の数だ。追跡調査によって確認した感染者は、自覚症状のない人が多い。調査縮小の影響が出ているなら、無症状の割合は下がる。だが感染者に占める無症状者の割合を通知前後で比べると、18.9%から23.5%(同)に上昇している」
(福田和郎)