2020年は、世界中が新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの新興国通貨が下落しました。
メキシコペソも、例外ではありませんでした。大きな影響を受けて、ペソ円は6円前後のレベルから4.3円前後へと、1.7円、30%近い下落となりました。
メキシコペソが売られたワケ
メキシコペソが売られた理由は、大きくは次の4つがあります。
(1)原油価格の急落。メキシコは産油国なので多大な影響を受けました。
(2)観光需要の消滅。コロナ危機で航空便が激減。海外旅行することが不可能になり、メキシコの観光産業は大打撃を受けました。
(3)海外からの送金の急減。海外で働くメキシコ人から本国へと送金される金額が、2020年は減少しました。コロナ禍で米国に入れなかったり、働いている人も雇用が不安定だったりと、家族に送金することもままならない人が多かったと思われます。
(4)米国経済の減速。最大の貿易相手国の経済不振はメキシコ経済を直撃したでしょう。
しかし、状況は変わります。米国はワクチン接種率が最も高い国の一つですが、ワクチン接種が進むことで、米国内の新型コロナウイルスの感染者数はいずれ激減していくことでしょう。事実、現時点で一日の感染者数は10万人前後ですが、ピークの30万人前後からはだいぶ落ちてきました。
米国人の気質を考えると、ワクチンを接種して自由を得たいという人は多いでしょう。ワクチン接種した人から海外旅行などの予約を入れ始めているとも聞こえてきます。米国人がそのうちカンクン等、メキシコの観光地に大挙して訪れることになるでしょう。
カギを握る米国経済の復調
旅行者が増えると、飛行機の便数も増えます。そうなると、原油の消費も進み、原油価格は上昇してきます。米民主党政権はフラッキングによる原油採掘に厳しい態度を取っていることを考えると、シェールオイルの産出が頭打ちし、原油価格が思わぬところまで上昇するリスクも出てきているのではないかと思います。
(1)原油価格が上昇し、(2)観光客が大挙してメキシコを訪れるようになり、(4)米国経済が復活してくると、早晩メキシコ経済もよくなります。(3)の海外労働者からの送金も、米国経済の復活とともに増えるはずです。
このように考えてみると、メキシコには格段に状況は良くなると思います。
先日、メキシコ中央銀行は政策金利を0.25%引き下げることを決定しましたが、米国経済が復活してくると、金利を下げる必要はなくなります。現状の4%ぐらいが下限なのではないでしょうか。4%でも他の国々がゼロ%近辺でウロウロしているので、十分高金利といえます。
メキシコペソ円は2020年2月に6.012円の最高値を付け、4月に4.226円の最安値を付けました。この下げの61.8%戻しは、およそ5.329円となります。5.25円前後で取引されていますが、このペソ円が5.33円前後のレジスタンス(上値抵抗線=上値を抑えている価格帯)を突破すると、5.50円が見えてきます。
メキシコペソへの投資に妙味を感じます。(志摩力男)