マンション管理2法の改正で、「マンションは管理を買う」時代がやってきた!?(中山登志朗)

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   今回の不動産コラムは、ちょっとマニアックな内容ですが、避けては通れない話であり、法改正をきっかけに考えておかなければならないことでもあるので、特に現在マンションのお住まいの方、これからマンションを買おうと思っている方には、ぜひお読みいただきたいと思います。

   2020年6月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」と「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が改正されました。コロナ禍でひっそりと実施された法律の改正ですが、じつはマンションに住む人、マンション売買および管理に携わっている人にとっては、非常に大きな法改正です。

  • マンションの「高齢化」は確実にどんどん進んでいく(写真はイメージ)
    マンションの「高齢化」は確実にどんどん進んでいく(写真はイメージ)
  • マンションの「高齢化」は確実にどんどん進んでいく(写真はイメージ)

マンションの「高齢化」はこれから確実にどんどん進む

   マンション管理2法の改正主旨は、一にも二にも、マンションの「高齢化」が確実に、どんどん進んでいることがあります。高齢化しても老朽化させないようにするには、どうしたら良いか。また如何に維持・管理をしやすくするかということにつきます。

   国交省によれば、築40年超のマンションは約81万戸とのことですが、これが2030年には約198万戸、2040年には4.5倍の約367万戸に達することが明らかになっており、今後は築年数が相当経過していても、老朽化対策の不備や管理組合の担い手不足が顕著なマンションが急増することが確実視されています。

   つまり、人に例えるとこれからどんどん高齢者が増えることがわかっているのに、面倒を見てくれる人がわずかで、医療保険、介護保険もほぼない状態にあるということです。

   今回の法改正には、まず老朽化を抑制すること、維持・管理をさらに適正に実施すること、老朽化が進んで機能保持のための修繕が困難なマンションを「再生」させることについて取組みを強化すること、などが盛り込まれています。

   具体的には、地方自治体によるマンション管理適正化推進計画の策定、管理組合への指導・助言、管理計画の認定、除却(取り壊し)の必要性に関する認定対象に耐震性不足だけでなく外壁の?落の危険があるマンション、バリアフリー性能が確保されていないマンションを追加すること、団地における敷地分割制度の創設などが新たに記載されました。

「マンションは管理を買え」とはどういう意味?

   少々話は変わりますが、筆者がこの業界で仕事をするようになって「マンションは管理を買え」という言葉を耳にするようになりました。これは、マンションは土地が共有(例外もありますが)で建物が区分所有、つまり個人が所有しているのは住戸という空間だけで生活している住人は「運命共同体」みたいなものだから、日々の管理の良し悪しで暮らし心地や将来売却した際の価格に差が付くという意味です。

   その後、マンションマーケットについてさまざま知識を得て、マンションは立地条件や戸数規模、タワー型や板状型などの形状、都心か郊外かといった広域での利便性に加えて、そのエリアの安全性(防犯・防災)や雰囲気(山の手か下町かといった違い)、さらに管理状況によっても違いが生じるケースがあることがわかりました。

   マンションは「不動産=動かすことのできない財産」であり、都市型の効率的な生活に適した居住形態ですから、都心か郊外か、駅に近いか遠いかといった交通条件と生活面での利便性が資産価値に大きな影響を与えていることは間違いありません。

   しかし、先述のとおりマンション居住者が運命共同体だとすれば、区分所有している住戸部分だけではなく、廊下やエントランス、給排水管路など建物と設備のメンテナンス状況、管理費水準や修繕積立金プール額などといったマンション共用部のソフト面、ハード面についての情報は購入前に必ず確かめておくべき項目のはずです。

法改正に対応、マンション共用部の情報公開が始まる

   しかし、こういったマンションの管理状況に関する情報は、購入希望者がかなり前向きに物件購入を検討している段階に至って初めて、買主の要望を受けて売主側に情報提供を求めるケースがほとんどです。つまり、マンション共用部の管理状況に関する情報は、当事者である管理組合のメンバー=所有者と管理会社など一部の関係者だけが知る"非公開情報"であり、積極的に公開される類の情報ではないのです。

   管理状況に関する情報を関係者だけに留めおくのには理由があります。例えば日常の点検などで共用部に不具合が見つかったり、所有者のなかに管理費や修繕積立金を滞納する者がいたりとネガティブな情報を含む可能性があるからです。設備に不具合が見つかっても修繕積立金が潤沢であれば直ちに修理して元の状態に戻すことができますが、そうでない場合もしくは高額な修理費用が発生する場合は当面そのままということもありますから、こういった情報を公にすることは(ポジティブな情報も含めて)なかったのです。

   やや宣伝ぽくなりますが、筆者が所属するLIFULL HOME'Sはこういったマンションの管理状況を専有部分である住戸と同じように事前情報として把握できるサービス、「LIFULL HOME'Sマンション管理評価」を2月上旬から開始しました。一般社団法人日本マンション管理士会連合会と提携し、これまで全国のマンション管理士が委託を受けて調査したマンション共用部のメンテナンス状況や管理組合運営状況などの診断結果を一定の基準で評価したうえ、12項目に渡ってその根拠をわかりやすく示すものです。

   もちろん、管理組合の掲載許可を得ています。管理状況が良いとアピールしたいマンションを紹介することができるサービスですから、住戸を購入候補として検討する際に、重要な付随情報として簡単に確認してもらうことができます。もちろん他にはない日本初の情報公開です。マンション購入に際しては専有部だけでなく、共用部の情報も必ず確認してください。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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