なぜドラッグストアは一人勝ちできたのか?

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経営者の給料を貯蓄して資本増強

   そして、2000年代末から現在までの第三次成長期になる。売上高は2009年から2020年の11年間で、ウエルシアホールディングス(HD)は4.3倍、ツルハHDは3.3倍、コスモス薬品が3.9倍と急伸している。

   売上高ランキングも2009年にはマツモトキヨシHDが1位、2位はスギHDだったが、2020年には1位ウエルシアHD、2位ツルハHDと入れ替わっている。何があったのか?

   日野さんは「第三次成長期は、M&Aによる規模の拡大ができたかどうかが成長に大きく影響した」と指摘している。

   ウエルシアHDとツルハHDは、大量出店と同時に、志を同じくする企業との積極的なM&Aによって規模を一気に拡大したのだ。

   また、コスモス薬品、クスリのアオキ、ゲンキー、薬王堂などは、直営店の高速出店によって、M&Aに頼らず規模を拡大した。

   この期間、総合スーパーは閉店ラッシュ、コンビニの店舗数の伸びは鈍化、減少傾向にあるなかで、唯一、ドラッグストアだけが成長しているのだ。

   その理由について、日野さんは「投資回収の早い店舗開発」「小商圏のドミナント出店」「販売キャッシュフロー(回転差資金)」の3つを挙げて説明している。

   個々の企業経営者についても、スケッチしている。北海道旭川市の薬局の二代目で京都大学薬学科を卒業した鶴羽肇氏と実弟で三代目社長の樹氏が拡大したツルハHD、愛知県西尾市で、夫婦で創業したスギ薬局からスタートしたスギHD。

   もともと零細な個人薬局からスタートしたドラッグストアが成功したかどうかは「資本増強」の有無だった、と日野さんは書いている。創業期にムダ遣いせず、経営者の給料を貯蓄して資本増強できたかがカギだったと。

   さらに、新しいカテゴリーの商品を導入する「ラインロビング」への挑戦が重要だ、と結んでいる。生鮮食品、園芸、アパレルに挑戦しているドラッグストアもある。

   既存業態の常識の枠から外れ、成長を続けてきたドラッグストアという業界について、本書を読めば、深く理解することができるだろう。

「ドラッグストア拡大史」
日野眞克著
イースト・プレス
860円(税別)

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