いったい東京五輪・パラリンピックは開催できるのか――。IOC(国際オリンピック委員会)が判断時期としていた3月上旬が迫っているが、「女性差別発言」騒ぎで東京五輪のトップの座が空白という異常事態が続いている。
そんななか、東京商工リサーチが、国内企業を対象に開催に賛成か反対かを聞いたアンケート調査を、2021年2月15日に発表した。当初の予定通りの開催を望む企業は7.7%しかいなかったが、「無観客」などの条件付も含めると開催に賛成する企業が44%に達した。
開催に「反対派」は56%ということだが、この数字をどう見るか。ネットの意見は大きくわかれた。
「4割以上の企業が開催を望むとは......」
今回の企業のアンケート調査をどう見るか、ネット上では意見が分かれた。開催に「賛成」「反対」が「56対44」という割合であることを、どう評価するかだ。
「企業アンケートでこの数字は、もう開催できないと言っていいでしょう。選手たちは残念でしょうが、世界のコロナ禍の状況からしても仕方ないですね」
「もう、東京五輪どころではないことを示しています。開催してもスポンサー企業しか恩恵がないとみて、全国の企業は興味を失くしています。それよりコロナ対策で、どこまで経済の建て直しに政府や経済界が本気になれるのかと言うことでしょう」
「今回の調査には表れなかったが、先日の東北の地震がダメ押しですね。コロナ禍で危ぶまれているうえに、10年ぶりの東北震災。しかも、東日本大震災の余震がまだ続いている。人々の努力の甲斐があって、被害はそれほど出なかったが、海外から見れば『恐ろしい国:日本』が焼き付いた。復興五輪と位置付けて復活した日本をアピールする場としていたが、再度被害を受けた。五輪に使う金があるならコロナ対策、震災復興にまわして欲しい」
一方、4割以上の企業が東京五輪開催を望んでいることに衝撃を受けた人も多い。
「未だに五輪開催を支持する企業が44%に及ぶことに驚いた。会社の経営的影響を鑑みての回答だとは思うが、現状のコロナ禍を思えば、もう少し道義的判断が加わり、支持率が下がると思っていた。現状、新規感染者が減ってきているとはいえ、海外渡航も制限され、病床不足の問題も解決していない状況で、開催したいと回答する神経が理解できない」
「現実問題として開催できるのか?現状でボランティアが減ることはあっても増えることはなさそう。医療従事者をワクチン接種の現場から引っこ抜いてきて五輪対策に従事させることに国民の理解が得られるのか。無観客であっても選手、関係者(報道等も含む)が数万人は来日するのだ。それを受け入れる覚悟・準備が国民にあるのか。企業の都合を優先させないでいただきたい」
こうした意見に対しては、こんな反論があった。
「道義的判断と批判するが、会社が傾いたら誰が責任を取るのか。思っている以上に企業にはステークホルダー(編集部注:直接・間接的な利害関係者)が多いし、むしろ中止派が54%もいるのはすごいことだ。企業の苦渋の良識を感じた。失業者は大手企業から出るのではなく、彼らの下請けから出るのだ。そうなったときに『失業率が高いなんとかしろ!』と言わない人だけが、彼ら賛成派の意見に石を投げましょう」
「僕がこの調査を読んでいて気になったのは、『開催中止になった場合のデメリット』として、企業が回答した(1)取引先への影響懸念(2)心理的に消極的な行動(3)株価の低下(4)国内全体の失望感の4点だ。特に2~4の回答の前提には、五輪を単なる景気浮揚目的の場と考えているインバウンド依存の発想があるが、それは本当だろうかという疑問だ。五輪が開催されている期間でも、普通の市民にとって『日常』は変わりなく続く。それは以前のサッカーやラグビーW杯、長野五輪でも同じだ。その時に日本の景気はどうだったのか。むしろ、シドニーやアテネ、ソウル、ロンドンなどで、五輪閉会後にそれぞれの国々の景気が上昇したのか、ちゃんと検証するべきではないのか。インバウンド依存に説得力があるかどうかに疑問符が付くとも言える」