「転売ビジネス」には危険がいっぱい 「転売ヤー」をも騙す上手のワルの横行に国民生活センターが警告

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   マスクやアルコール除菌グッズなどが店頭から姿を消した、コロナ禍の2020年。その悪役として一気に知名度が上がったのが「転売ヤー」と呼ばれる人々。

   転売を生業とする彼らの行状が現在もしばしば世間を騒がせているが、その「転売ヤー」をも騙す、さらに上手(うわて)のワルが横行している。転売ビジネスをめぐるトラブルが増えているのだ。

「転売ビジネスで稼ぐつもりが... 簡単には儲からない。うまい話は絶対にうのみにしないで!」

と、国民生活センターは2021年2月10日、注意を呼び掛けた。

  • 楽に儲かるはずだったのに、だまされた女性(写真はイメージ)
    楽に儲かるはずだったのに、だまされた女性(写真はイメージ)
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「誰でも稼げる」と130万円払ったのに全然儲からない

   国民生活センターが発表した「転売ビジネス ~ネット広告やSNS情報、友人からのうまい話をうのみにしないで」によると、「転売ビジネスの誘いで高額の会費をだまされた」などという相談が、2019年度は1411 件と、5年前(15年度)の548 件に比べて約2.6倍も増えている。

   被害者の半数近くを10~20歳代の若者が占めるのが特徴で、30歳代以上の世代よりも、普段からフリマサイトやネットオークションを利用している分、騙されやすいようだ。

転売ビジネスの流れ(国民生活センター作成)
転売ビジネスの流れ(国民生活センター作成)

   その代表的な手口を紹介すると――。

【事例1】返金保証もあると言われて高額なサポート契約をしたが、商品は売れず返金もされない
「安く仕入れた商品をフリマサイトで、高値で転売する」という副業を紹介する事業者を検索で見つけ、1万円でガイドブックを購入した。事業者から電話があり「この副業にサポートがついている50万円のコースがある」「万が一、儲からなくても返金保証もある」と説明され、50万円を支払った。サポート通りにフリマサイトに商品を出品したが、買い手がつかず利益が出ないまま仕入れ費用だけがかさんでいる。事業者に返金保証について問い合わせたが、「あなたは返金保証の対象ではない」と言われた。返金保証には、指定商品の販売をすること、フリマサイトで150人以上からフォローされていることなどが条件で実現できそうにない。返金してほしい。(2020 年6月、20歳代女性)

【事例2】「誰でも稼げる」セミナーをきっかけに高額契約したが、作業が難しすぎてできない
「誰でも稼げる」セミナーをインターネットで知り、参加した。海外の通販サイトで商品を選び、日本のクラウドファンディングのサイトで紹介・転売する仕組みだ。海外の通販サイトで便利そうな工具用品を見つけたので、セミナーの講師に見せると、「この商品で300万円は儲かる」と言われた。その気になり、もっと儲かる方法を教えてもらう130万円のスキル向上指導コースを契約した。「先に日本のクラウドファンディングのサイトに売れそうな商品を出品し、売れてから海外サイトで実際に商品を仕入れる」と説明され、やってみたが数万円しか売れなかった。商品を日本で独占販売できるよう海外事業者に英語でメールを何百件も送るなどの作業が多く、難しくてできない。簡単には稼げないので解約したい。(2020 年7月、40 歳代男性)

【事例3】仕入サイトの商品の在庫が少なく、広告にうたうほど稼げない
SNS で知り合った人から副業を紹介された。事業者の広告を見ると「好きな時間にできる」「月2~3万円の収入」「在庫を持たずに転売で差益を稼げる」という内容だった。電話で聞くと、「仕入れサイトで商品を選び、フリマサイトに出品し買い手がついたら、仕入れサイトから商品を配送するので無在庫で転売できる」との説明だった。毎月5000円の会費が必要とのことだった。契約後、仕入れサイトで数点商品を選び、フリマサイトに出品したが売れない。そもそも仕入れサイトに在庫がない商品が多く、選択肢が少ないので月2~3万円は難しい。1年分の会費6万円を支払うよう請求されている。(2020年7月、20歳代女性)

「違法」の無在庫転売を勧められアカウントが凍結された

【事例4】入会費40万円でオンラインコミュニティーに入ったが、個別サポートが受けられない
SNSで知り合った人から転売ビジネスのオンラインコミュニティーを紹介された。ウェブ会議やメッセージアプリで詳しい話を聞くことになり、「アフィリエイト(成功報酬型広告)や転売について学べて稼げる。入会すれば、最初の3か月は個別のコンサルティングでサポートが受けられる。仕入れ値の倍は稼げる」などと言われた。またオンラインコミュニティーを人に紹介すると報酬が10万円もらえる。入会費40万円を振り込み契約したが、契約書等は一切ない。説明されたようには稼げないし、サポートもない。(2020 年9月、30歳代女性)

【事例5】「リスクのない転売ビジネス」のはずが、フリマサイトで禁止された無在庫転売だった
転売ビジネスを情報発信している女性を見つけ、メッセージアプリで連絡を取った。「学生でも月に40万円稼げる」「在庫を持つリスクがないので初心者でも簡単にできる」「入会するとノウハウが入った電子データ、講師などで作るチャットルームへの加入と1年間のサポートがある。40万円と80万円のコースがある」と説明された。40万円のコースに入会した。送られてきた電子データの内容を確認すると、無在庫転売やサンプル品転売をするといった内容だった。本当にやっていいのか不安になり、フリマサイトの利用規約を確認すると「在庫を持たない転売は禁止」と記載されていた。問題があると思い、解約を申し出たが断られた。(2020年9月、20歳代男性)

【事例6】転売ビジネスのノウハウを消費者金融から借金させられて契約したが、役に立つ内容ではなかった
私は学生だが、友人にネットビジネスのノウハウを教えるという男性を紹介された。「仕入れた物をネットオークションやフリマサイトで売れば儲かる」「50万円でノウハウを教える」と説明された。「お金がない」と言うと、「働いていることにしてお金を借りればよい」と消費者金融に連れて行かれた。その場でお金を男性に手渡したが、契約書などの書面は何ももらわなかった。数回男性に会ってノウハウを聞いたが、あまり役に立つ話ではなかった。解約して全額返金してほしいが、男性のSNSアカウントの情報しか分からず、メッセージへの返信もなくなった。(2020年8月、20 歳代女性)

   このように、まず簡単に高収入が得られることを強調するネット広告や、SNS で知り合った人物からの紹介で消費者に興味を持たせることが始まりだ。

   その際、「未経験者でもOK」「月に数十万~数百万円の収入も可能」「1日10分のスマホ作業で稼げる」など時間と労力をかけないことが強調される。

   次に、「詳しい話を聞きたい」と連絡を取ると、「本当に転売ビジネスで稼ぎたいのならプロのサポートが必要」と言われ、高額のサポート料やコンサルティング料が要求される。数十万円が多いが、100万円を超えるケースも珍しくない。

   また、転売ビジネスを始めるノウハウなどが書かれているとうたう「情報商材」を数千円~数万円で購入する必要があるケースもよくある。情報商材は電子データで提供されるが、どのような商品を仕入れればよいか、どのように商品を紹介すれば売れるかなどの具体的なノウハウは書かれていない。もっと知りたければ、さらに高い「情報商材」を買う必要があると、消費者の欲望を掻き立てて値段を吊り上げていくのだ。

高額な費用が必要と言われた時点で要注意

詐欺師の甘言に引っかかってはダメ
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   事業者からサポートがなく、指示どおりに作業しても必ず利益が出るわけではない。提供されたノウハウが役に立たないどころか、なかにはフリマサイトや通販サイトの利用規約で禁止されている「無在庫転売」をするよう指示する「違法」なケースもある。

   指示どおりに無在庫転売をしたところ、フリマサイトからアカウントが凍結されたケースがあるありさまだ。

   こうして、消費者が不審を持ち、「解約したい」と申し出ても、事業者が素直に解約に応じるケースは少ない。返金されるためには「商品が一つも売れなかった場合」「一定時間以上、指示された作業を行った場合」「フリマサイトで150人以上からフォローされている必要がある」などの条件があると言われ、うやむやにされる。さらに突然、連絡を絶つ事業者もいる。

   国民生活センターではこうアドバイスしている。

「転売ビジネスに関する『簡単に儲かる』といった広告や友人からのうまい話を絶対にうのみにしてはいけません。広告に記載されている金額ほど稼げなかったというトラブルが絶えません。また、契約のきっかけが友人・知人からの紹介という場合でも、同様のトラブルが生じています。転売ビジネスを始めるために高額な費用が必要といわれた時点で、もう要注意です。契約を断るときに『お金がない』というと、クレジットカードでの支払いや借金をするよう勧められ、断り切れなくなります。『契約しません!』『やりません!』とキッパリことわりましょう」

   また、トラブルにあった場合は、契約の取消しやクーリング・オフができる場合があるので、最寄りの消費者ホットライン(電話番号『188 いやや!』)に連絡することを勧めている。

(福田和郎)

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