「そうだったのか」が満載! 思想家と写真家が語るショッピングモール

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「ショッピングモール・イスラム起源説」

   大山さんは写真家の立場から、モールは外観ではなく、内装とくに吹き抜けに本質がある、と提起している。

   二人は街の商店街とモールを比較して、こんなやりとりをしている。

東さん「日本でも道路は健常者の大人にとっては歩きやすいのだけれど、ベビーカーを押しているとてきめんに歩きにくい。子どもを育てているときに気づきました。ショッピングモールは、排除的と言われるけれど、じつはそういう社会的弱者にやさしい空間を実現している」
大山さん「日本の場合は、ショッピングモールの多くは工場の跡地に建てられます。土地を持っている企業はなるべく効率的に売却したい。細分化するとムダが出てくるので、そのまま買ってくれるところがいい。そうなると、ショッピングモールか大型マンションになる。その結果、行政が規則通りにつくった区画道路よりも、モールの内部に「理想的」な街路ができあがったりする」

   そして、政府が地方で推進している「コンパクトシティ」はモールとして実現する、と大胆な予測をしている。

   ラゾーナ川崎、埼玉県越谷のイオンレイクタウン、千葉県船橋市のららぽーとTOKYO-BAY、同浦安市の東京ディズニーリゾート内のイクスピアリなどを取り上げながら、飛び出したのが、「ショッピングモール・イスラム起源説」という突拍子もない話だ。

   モールの空間は、砂漠という環境におけるオアシスとしてデザインされているというのだ。日本の場合、広大な駐車場を砂漠と見立てれば、そう見えないこともない。

   世界で最初のモール型ショッピングセンターは、1956年にアメリカ・ミネアポリス郊外にできたサウスデール・センターだそうだ。

「砂漠の中に楽園としてつくられた庭園がヨーロッパを経由し地球を半周してアメリカにたどり着き、同じような乾燥した気候の西海岸でモールという形式を獲得したのではないか。そしていまぐるりと地球を一周してドバイに世界最大級のモールが存在する、という珍説だ」(大山さん)

   このほかにも、「いまや駅も空港も公園も、図書館でさえ、どこか『ショッピングモール的』であることを意識してつくられ、運営されるようになっている」(東さん)

「『吹き抜けがあるのがモール』で、『ないのが百貨店』ということがわかってきました。その点、阪急梅田はさすがです。最近リニューアルされて、いままでなかったたくさんの吹き抜け空間が生まれた。また表参道ヒルズでは、吹き抜けとガレリアが一体化されている。いわばモールの最終形ですね」(大山さん)

などの観察が紹介されている。

   特定の企業を連想させるためか、日本ではこれまであまりショッピングモールは議論や観察の対象はおろか、都市論や建築批評からもパージされてきた。本書は学問的な研究ではなく、「放談」(東さん)だそうだが、取り上げている領域はじつに広く、おもしろい。

   業界やマーケティング関係者だけでなく、広く消費や都市に関心のある人にオススメしたい。

「ショッピングモールから考える」
東浩紀・大山顕著
幻冬舎
840円(税別)

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