司法制度改革によって、司法試験が簡単になったということはよく知られている。2005年まで続いた旧司法試験時代の合格率は1~2%の狭き門だったが、2019年の新司法試験の合格率は33.63%とグッと間口は広くなった。
弁護士が急増し、食うのも大変な弁護士もいると聞いた。本書「激変する弁護士」(共栄書房)は、かつて「文系エリート」の代表と言われた弁護士の実態について、現役弁護士が書いた本である。あまりに正直に書いたので、ペンネームを使わざるを得なかったというが、弁護士との正しいつき合い方を披露しているので、企業の法務担当者や司法に関心のある人にとって有益な本だろう。
「激変する弁護士」(宮田一郎著)共栄書房
夜のネオン街が「営業活動」の舞台
著者の宮田一郎氏のキャリアはこうだ。弁護士になる前は公務員をしていた。司法試験合格後は司法修習を経て、「大都市と人口の少ない地方で30年以上弁護士をしている」。裁判所の調停委員、ボランティア団体・市民団体の役員、多くの労働・行政・公害・国会賠償、消費者事件などの代理人を務めたというから、「人権派弁護士」の匂いも少しする。実名で多くの雑誌記事、論文、著書を書いている。
2部構成だ。1部は「絶望の弁護士界」で、2部は「失敗しない弁護士選び」。
1部のタイトルが「絶望の弁護士」でも、「絶望の弁護士会」でもないのは、「弁護士の業界は絶望的だが、問題と課題が多いことは発展の可能性が多いことを意味する。これからの弁護士は司法の発展のために活躍する余地がいくらでもある」からだという。
第1部では弁護士の実態をリアルに描いている。すべて宮田氏が実際に経験したことであり、内容はすべて真実だそうだ。
まず、宮田氏が弁護士になって驚いたのは、弁護士の金遣いの荒さだ。多数の司法修習生や若手弁護士を引き連れて夜のネオン街を豪遊する弁護士がけっこういた。飲み代の多寡が弁護士としてのステイタスを示していたという。
また、弁護士を接待する依頼者は事業の成功者や資産家が多く、夜の歓楽街で気前よく金を使った。弁護士が頻繁に飲み歩いたのは、飲食が弁護士の顧客獲得の重要な手段になっていたからでもある。営業活動でもあったのだ。
さらに、仕事上のストレスも関係している。他人の喧嘩の一方に肩入れする仕事なので、他人から恨まれやすい。ストレスが生じやすいのだ。
裁判の勝ち負けに一喜一憂し、負ければ依頼者から非難を受ける。弁護士はストレスの解消法として酒を飲み、自分が扱った事件の自慢話をし、裁判官の悪口を言う。
不摂生がたたって早死にしたり、うつ病などの精神疾患に罹ったりする弁護士も少なくないという。