人材育成の「5つのR」
新型コロナウイルスが流行した2020年、片桐さんは依頼された新入社員の研修をすべてリモートで行った。
新人たちは口をそろえて、「早く職場に行きたい」「上司や先輩の顔を見て仕事をしたい」と訴えたという。リアルな職場の空気感や緊張感を肌身で感じたい、というのが大きな理由だ。
テレワークになると、実際に触れ合うことができず、パソコンのモニターを通じてやりとりすることになる。「俺の背中を見ろ」といった育成はできなくなった。だからこそ、伝えるべきことはきちんと言語化し、部下に対する期待を可視化する作業が常に必要になる。
仕事における報告・連絡・相談、いわゆる「報連相」は、部下から上司に対して行われるものだったが、片桐さんは「逆・報連相」を意識していくようにと書いている。
上層部から自分に下がってきた情報をチームに落とし込み、組織で決定した連絡事項について、部下にきちんと流す。また、相談も上司から部下に対しても行うようにしましょう、と提案している。
多様な個性の人を部下に持ち、しっかりマネジメントしていくには、自分が組織のハブになるという覚悟を決めるように求めている。
テレワークでは人は育てられないという勘違いを正し、テレワークで人材育成をするための全体像を示している。その際に「5つのR」という要素を挙げている。
「Reason(理由)」「Relation(関係)」「Rule(ルール)」「Route(ルート)」「Risk(リスク)」だ。
人は自分の理由でしか動かない、人は人との関係性の中でしか成長できない、人にはルールが必要だが臨機応変な対処も、人にはコミュニケーションのルートが必要、人が成長するにはリスクを冒す必要がある、と説明している。
テレワークで離れていても、部下の成長を信じて「5つのR」を意識し実践すれば、必ず人は育つ、と力説する。