不況に強いと言われる化粧品業界が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で苦境に追い込まれている。
東京商工リサーチが2021年2月4日に公開したレポートによると、外出自粛やテレワークの浸透の余波で、化粧品メーカーが発表した直近の四半期決算は前年同期に比べて大幅な減収だった。また、総務省が2月5日に発表した家計調査報告でも、化粧品類への支出が減少していることが示された。
インバウンド不在も影響
景気の良し悪しの影響を受けにくいとされる化粧品業界がピンチだ。カネボウ化粧品を傘下に持つ花王は2021年2月3日、20年12月期決算(通期)を発表。売上高はハンドソープや消毒液などの衛生用品が伸長したが、前年比8.0%減となる1兆3819億9700万円だった。
営業利益は1755億6300万円(前年比17.1%減)。しかし、化粧品事業に限っては売上高が2341億円(同22.4%減)、営業利益26億円(同93.7%減)で、コロナ禍の影響をダイレクトに受けたとみられる。
21年12月期もコロナ禍の影響が継続するとの見通しから、化粧品事業は売上高を2490億円と予想。20年12月期比で6.7%増と見込む。ただ、それでもコロナ禍前の19年12月期(3015億円)の水準には戻らないとみている。
長引くマスク生活で、口紅などマスクの下に隠れる部分に使う商品の不調が深刻だ。感染防止策で店頭からテスター(試供品)が撤去されるなど販促がままならないばかりか、インバウンド需要が見込めず、また外出自粛による需要がどんどん消失した。
とくに女性にとって化粧品は「生活必需品」であり、マスク着用の常態化で、化粧品の必需品としてのレベルがさがり、化粧品メーカーの業績にハネ返ることになった。
「ファンデーション」や「口紅」売れず...
2021年1月29日にコーセーが発表した21年3月期第3四半期決算は、売上高が2041億3500万円(前年同期比18.0%減)、営業利益が111億4100万円(同70.6%減)だった。東京商工リサーチによると、コーセーでは、シワ改善美容液やマスクで覆われない目元向けのアイメイク商品は「比較的堅調に推移」しているとして、コロナ禍に影響されないカテゴリーに期待を寄せているという。
ノエビアホールディングスも2021年1月29日、21年9月期第1四半期決算を発表。売上高は138億7200万円(前年同期比10.3%減)、営業利益は30億2500万円(10.5%減)だった。そのうち、化粧品事業の売上高は109億2900万円(10.0%減)。ポーラ・オルビスホールディングスは20年12月期第3四半期の売上高が前年同期比24.0%減。化粧品とサプリメントが主力のファンケルの21年3月期第3四半期の化粧品事業の売上高は前年同期比17.9%減と、大手は軒並み10~20%前後の減収となっている。
資生堂の売上高は前年同期比で22.8%減た。主力の化粧品だけでなく、ヘアサロンの休業などでヘアケア類の需要も落ち込み、20年12月期は300億円の最終赤字を見込む(2月9日通期決算を発表予定)。
経済産業省の生産動態統計によると、20年11月の化粧品出荷額は前年同月比10.9%減の1285億円で、9か月連続で2ケタ減。また、総務省が21年2月5日に発表した家計調査では、20年11月、12月にコロナ禍で「消費行動に大きな影響が見られた主な品目」を挙げ、その中には「ファンデーション」や「口紅」も。それによると、11月のファンデーションへの支出は、前年同月比10.6%減、12月は12.9%減。口紅は11月が38.4%減、12月は40.2%減だった。口紅は、2人以上世帯についての2020年通年の家計調査でも前年比36.2%減だった。
コロナ禍の出口が見えないなか、化粧品業界にとっては「我慢の経営が続きそう」と東京商工リサーチという。