辛辣なアドバイスも
よくある「自己啓発」本と違い、口当たりのいいことはあまり書いていない。むしろ辛辣だ。たとえば、「評価されない」「昇進できない」の対処法の項目では、以下の「ファクト」を示している。
・能力の低い人ほど自己評価が高い
・あなたが認められない理由は「実力不足」
・「自分の勉強」が不足している
そして勉強の基本は、「読書」だとしている。本を読みインプットし、それらを自分の頭で考え、咀嚼してアウトプットするという方法論が多くの人に支持され、樺沢さんの本は大ベストセラーになった。すでに実践しているビジネスパーソンも少なくないだろう。
副業や投資にもふれているが、最も確実でリターンが大きい投資は「自己投資」というのも樺沢さんらしい。20~30代の頃は、稼いだお金はすべて知識や経験に費やしたという。読書や映画、海外旅行など、それらの経験が、現在の情報発信や作家活動のベースになっているそうだ。「自己投資は絶対にあなたを裏切らない」と書いている。
仕事のほかにも、睡眠不足の解消法、運動不足の対処法、自己肯定感を高める方法など、心と健康に関するアドバイスが載っている。
自説を展開するだけでなく、随所で「さらに学びたい人は」として、さまざまな本を紹介しているのも誠実だと思った。人の意見に流されやすい人には、羽生善治著「決断力」(KADOKAWA)、「人から嫌われたくない」と過度に思っている人には、岸見一郎・古賀史健著「嫌われる勇気―自己啓発の源流『アドラー』の教え」(ダイヤモンド社)、AIに仕事を奪われるのではと心配している人には、堀江貴文・落合陽一著「10年後の仕事図鑑」(SBクリエイティブ)、「死にたい」と感じたことがある人には、モカ・高野真吾著「12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと」(光文社)など多数挙げている。
それらの書評を書いた評者としては、その適切な選書にうなずくしかなかった。さまざまなストレスに悩むすべての人に勧めたい一冊だ。
「精神科医が教える ストレスフリー超大全」
樺沢紫苑著
ダイヤモンド社
1600円(税別)