コロナ禍で、倒産する企業や失業者が増えるなか、2021年主要企業(東証1部・2部上場クラス)の「賃上げ見通し」が発表された。民間調査機関の労務行政研究所が2021年2月3日にまとめたデータによると、定期昇給込みで5524円、賃上げ率で1.73%と予測した。
賃上げ率が2%を下回ったのは13年以来、8 年ぶり。
ベアは「ゼロ回答」に近い
2021年の賃上げ見通しは、全回答者の平均で5524円、賃上げ率で1.73%だった。厚生労働省の調査における主要企業の20年の賃上げ実績(6286円、2.00%)から、762円、0.27 ポイント減少した=下図参照。
労務行政研究所によると、
「定昇は、会社ごとに約款で決められているケース大半なので、それを改定するとなると、労使交渉を含め、多くの時間が必要となります。よってコロナ禍の中で、労使間で『交渉によるムダな時間をなくそう』となった企業が多かったというように推察されます」
と話した。
一方、ベースアップ(ベア)をみると、
「こちらは、どちらかというと労働組合側が折れたというか、弱気な感じだったと受け止めています。コロナ禍で倒産する企業も増えているなか、『定昇が維持できるのなら、ベアについては、今年は...』と、要求しなかった企業が多かったように見受けられます」
と分析した。
自社における2021年の定昇とベアの実施状況をみると、定昇は、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8割台と大半を占めたが、ベアについて労働側は「実施すべきではない(実施は難しい)」が 46.9%と、「実施すべき」の41.7%を上回った。経営側は「実施しない予定」が 61.9%で、「実施する予定」は4.8%にとどまった。
また、調査時点では「検討中」が27.6%と3割弱を占めた。
コロナ禍で経営が厳しいが、経営者側は「定昇は守る」、労働者側は「定昇を守ってくれるならベアは要求しない」と、お互いの折衷案をとった「痛み分け」の結果が「5524円、1.73%」の数字になったということだ。
今年の夏季賞与は「減る」?
一方で、賞与や一時金に関して労務行政研究所は、「コロナ禍による企業業績の変動が本格的に影響し始めると予想される」と報告している。
調査によると、労働側では「(2020年夏季と比べて)同程度」が 50.6%で過半数に達したが、「減少する」も41.3%と4割を超えた。経営側では「同程度」が60.4%と6割超、「減少する」が33.8%だった。なお、専門家は「減少する」が 62.1%と最も多かった。
なお、調査は2020年12月1日~2021年1月18日に実施。対象は東証1部・2部の上場企業の8549人(そのうち、労働側2026人、経営側4950人、労働経済分野の専門家 や大学教授、労務コンサルタントなど1573 人)。有効回答は425人。ただし、「2021年夏季賞与・一時金の見通し」については513人。