新型コロナウイルスをめぐる緊急事態宣言に伴い、政府や自治体は、対象の地域の事業者に出勤者数を7割削減するよう求めた。しかし、日本生産性本部が、そのテレワーク実施率を調べると、結果は全国で22%にとどまっていた。
通信をめぐってソフトもハードも進化した現代では、テレワークやリモートワークへのシフトは容易なようにも考えられるが、本書「リモートワーク段取り仕事術」によれば、じつは、その書名が示唆するように、段取りが必要。ところが今、なかなか実施率が上がらないのは、最初の緊急事態宣言時、それとは知らず多くの企業がロクに準備をしないまま在宅勤務を始め、うまく機能しなかった経験がトラウマとなっているのだろうと納得できる。
「リモートワーク段取り仕事術」(相原秀哉著)明日香出版社
アップトゥーデートなリモートワークを
著者の相原秀哉さんは、業務改革コンサルティングの株式会社ビジネスウォリアーズ(東京都千代田区)の社長。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。以来、業界・業種を問わずホワイトカラーの業務改革コンサルティングに従事する、業務改善のスペシャリストだ。
段取りが必要なリモートワークではあるが、リモートワークそのものを特別視する必要はないと相原さん。
「取引先や業務委託先とのやり取りをすべて対面で行っているという人は、ほとんどいないでしょう。多くの人はメールや電話、あるいはFAXといった通信技術を使っているはずです。それは先方との間でリモートワークしていることに他なりません。会社でリモートワークを導入するというのは、それまで社外とリモートでやり取りしていたことが、部署内や社内に広がったというだけのこと」
だが、メールや電話、FAXがツールの主役だったころに比べて現代ではテクノロジーが格段に進歩。スマートフォン、ウェブ会議ツールやチャットツールのほか、さまざまなクラウドのアプリもあり、リモートワークやテレワークを快適に行うための環境は遥かに整っている。
アップトゥーデートなリモートワークにではまず、こうした環境を最大限生かす必要がある。そのために必要な段取りの一つが通信環境に対する認識をしっかり持つことだ。